知る

資産の選び方

08_不動産購入時の考え方

「賃貸vs購入」だけではない本質的な理解を

結婚して、子供が産まれる頃になると「自宅の購入」を検討する人が多くなります。
しかし、皆さんが自宅を購入する理由は何でしょうか?

購入を希望される方々に聞いてみると
「もっと広い家に住みたい」
「もっと交通の便が良いところ(都心)に住みたい」
「金銭的に買った方が得である」

などが主な理由としてあげられます。
しかし、「もっと広い住まいに住みたい」ということであれば、もっと広い住宅を借りて住めば良い話ですし、通勤や都心に住みたいということに関しても、賃貸で利便性の良いところに住めばよい話です。

おそらく、「金銭的に買った方が得だと思う」という理由が大きいのだと思います。

「購入が得か?」「賃貸が得か?」という議論は、よく書籍などでも展開されますがどのように考えたらよいのでしょうか?

例えば4,000万円のマンションを頭金400万円、住宅ローン3,600万円(金利3% 35年固定)で購入するケースを考えてみましょう。

頭金      400万円
住宅ローン   138,500円×12ヶ月×35年=5,817万円
購入諸経費   240万円(約6%)
維持費(固定資産税、管理費、修繕積立金) 年間50万円×35年=1,750万円
総額8,207万円程度の総支出が見込まれます。

そして、35年後に築35年のマンションが手に入るということになります。この資産価値の算定は難しいものがありますが、今後の日本の住宅事情を考えると2,000万円程度になるのではないでしょうか?
8,207万円支払って35年後に2,000万円程度の不動産を手に入れることになります。
35年で総額6,207万円の支出と考えても良いと思います。

一方で賃貸の場合には、現在4,000万円程度の都心のマンションを賃貸で借りると家賃は15万円程度しますので、

住宅費     15万円×12ヶ月×35年=6,300万円
賃貸の場合は、総額6,300万円かかる計算になります。

これだけを見ると、ほぼ総支出額に差は無いと感じますが、その他に考慮しなければいけない点が2点あります。

1点目は頭金の運用です。
購入の際に頭金として準備していた資金を35年間運用した場合には下記のようになります。

金利1%   566万円
金利2%   800万円
金利3%   1,125万円
金利4%   1,578万円

賃貸の場合には、運用の成果によって変化はありますが、上記の金額は金融資産として残ります。

2点目は35年後以降の住居費です。
購入の場合には、マンションの耐久性にもよりますが、40年後なのか50年後なのかどこかの段階で建て直しの話が出てくると考えられます。
その場合の支出は上記の計算に含まれていませんので、どこかの段階で売却するか、建て直しをするのであればその費用負担をさらに計算しなくてはいけません。
一戸建ての場合も建て直しが必要という点では同様です。

つまり賃貸の方が購入よりも金融資産が残る点と、建て直しの負担を考慮しなくて良い点で「金銭的に得」だと考えられます。

住宅の購入は「金銭的に得か?損か?」図

ただし、住宅の購入は一概に「金銭的に得か?損か?」だけで判断するものではありません。

「子供や家族のために家を持ちたい」
「家を所有することで達成感や充実感を感じる」

という理由も個人にとっては大事だと思います。
重要なのは、上記の経済的仕組みを理解したうえで、個々人のライフプランと重ね合わせて判断するということです。

中古物件のススメ

上述では、購入と賃貸の経済的比較をしてみましたが、購入をお考えの方であれば「中古」物件をオススメします。
その理由は、日本の住宅取引市場は、需要側(欲しい人)が「新築」物件に偏っている為に、住宅価格は「新築」から築10年程度までの価格の下がり方が著しくなっているという住宅価格事情にあります。

中古マンションにおける築年数経過時の価格推移

逆に築10年以上の物件においては、価格の下げ幅は限定的になりますので、資産価値として考えた場合の不動産価格は、「新築」を買うよりもよっぽど安全です。
この場合には購入を選択したとしても、賃貸とほとんど経済的な差は生じないと考えてもよいでしょう。

購入する際の注意点

不動産は非常に高い買い物であることは皆さんもご理解いただけると思います。
したがって、この高い物を購入する場合には、いくら慎重に行動してもしすぎることはないと思います。

まして、上記のような中古物件を購入される場合にはなおさらです。

ここで利用をオススメするのは不動産の「インスペクション」(調査)です。

不動産のプロ(例えば不動産投資法人)が不動産を購入する時には、必ずエンジニアリング・レポート(ER)と呼ばれる、建築物・設備等及び環境に関する専門的知識を有する者が行った不動産の物理的状況に関する報告書を取得します。

それと同様に個人が不動産を購入する際に欠かせないのが「インスペクション」(調査)です。
不動産調査のプロに購入前に物件を調査してもらうことで、購入後のトラブルやリスクを減らす事ができます。

高い買い物ですから、このような手順を惜しまずに検討した方が、後に後悔しなくてすむはずです。