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国有財産の処分方法について

2018.11.22(Thu)|カテゴリ:世界経済

前回から連載でご紹介しているアジア開発銀行研究所所長の吉野直行さんのメッセージです。

第2回目は、国有財産の処分方針、埋蔵金問題についてです。

国有財産については村田和彦(財政金融委員会調査室)さんの「立法と調査」2018年9月号に現状がまとめられていたので、引用させてもらいます。
(オリジナルはこちら

以下引用です

国有財産行政の対象となる財産は、国有財産法(昭和 23 年法律第 73 号。以下「法」という。)
第2条及び附則第4条に規定されている財産をいい、具体的には不動産、船舶・航空機等の動産、有価証券などがある。
法では、国有財産を「行政財産」と「普通財産」に分類している(法第3条第1項)。

行政財産は、
①庁舎、国家公務員宿舎、刑務所などの「公用財産」、
②国道、河川、公園などの「公共用財産」、
③皇居、御所などの「皇室用財産」、
④国有林野事業のための国有林野の「森林経営用財産」

の4種類に分けられており、各省各庁の長が管理することとされている(法第3条第2項、第5条)。
また、行政財産は、原則として売払い、貸付け等の処分を行うことはできず、行政財産が不要となった場合は、各省各庁の長はその用途を廃止して普通財産とし、財務大臣に引き継ぐこととされている(法第 18 条第1項、第8条第1項)。

普通財産は、行政財産以外の一切の国有財産をいい(法第3条第3項)、
原則として特定の行政目的に直接供されることのないものであり、例えば庁舎などの跡地、物納された土地、政府保有株式などがあり、原則として財務大臣が管理処分することとされている(法第6条)。

一部の各省庁所管の特別会計所属の国有地は、所管省庁が自ら処分する権限が認められている(法第8条第1項ただし書、同条第2項)。
近年は、国有財産の有効活用を図る観点から、財務省への事務委任を積極的に推進することにより、統一的ルールによる処分等が進められている。

国有財産台帳で管理されている国有財産の現在額は、毎年度、国会に報告することとされており、平成 28 年度末の国有財産現在額は 106 兆 79 億円であり、そのうち、行政財産は 23 兆 4,645 億円、普通財産は 82 兆 5,434 億円となっている。

また、国有財産のうち、土地の総額は 17 兆 9,693 億円であり、そのうち行政財産が 13 兆 932 億円、普通財産が4兆 8,761 億円となっている。
普通財産の土地のうち、在日米軍施設、地方公共団体等の公園用地等がその多くを占め、処分対象となる未利用国有地は 4,234 億円となっている

土地の面積で見た場合、国有地の面積は 87,650 ㎢、国土面積 377,971 ㎢の約 23.2%に相当する。
そのうち、行政財産は 86,633 ㎢とその約 99%を占め、普通財産は 1,017 ㎢となっている。

普通財産のうち、山林原野等が 845 ㎢と 83%を占め、未利用国有地は9㎢と

普通財産の土地の1%程度を占めるにすぎない。

なお、普通財産の土地のうち特別会計所属のものは、1,502 億円、2㎢となっている。
以上 引用終了

引用の中でも

「行政財産は、原則として売払い、貸付け等の処分を行うことはできず、行政財産が不要となった場合は、各省各庁の長はその用途を廃止して普通財産とし、財務大臣に引き継ぐこととされている」

「近年は、国有財産の有効活用を図る観点から、財務省への事務委任を積極的に推進することにより、統一的ルールによる処分等が進められている。」

という事からも、国有財産については、なるべく有効活用の観点から、そして国の財政に貢献することを目的に売却処分されることになっています。

しかし、吉野先生は、この国有財産の売却処分について疑問を持たれています。

それは、売却処分を行って財政的に改善されるのは一時的な効果しか得られません。
それよりもしっかりと国有財産を有効利用して、中長期的に活用できる状況にすることの方が長期的な財政改善に貢献することができるのではないかと考えています。

つまり、例えば1,000億円の国有財産があるとした場合、

①これを民間に売却してしまえば、その時点で1,000億円の国庫収入があり、国家財政が1,000億円改善します

②これを有効活用し、仮に4%程度の収益性のあるものにできれば、年間40億円の収入があり、財政が40億円分改善します。
そして、その効果が長く続くほど、国家財政に長期に寄与します。

ここで、吉野先生が②の案を支持するのは、主に世代格差や高齢化に伴う影響です。

①の案は、一時的に改善しますが、それだけで現在の現役世代にしか影響がありません。
②の案では、中期的に改善を促すことで、その効果は現役世代のみならず、将来世代への好影響も考えられます。

小屋の頭に浮かんだ例は、霞が関コモンゲートです。

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この場所は、文部科学省と会計検査院の跡地を、民間と合同で再開発した事例です。

現在では、東館に文部科学省、文化庁、会計検査院、西館に民間企業が入っています。

この土地は官民一体で再開発した結果、国有財産と民間の財産に別れた結果になっていますが国有財産をこのような形で再開発して、収益性を向上させることのできる例はたくさんありそうです。

このように単純に売却処分をして、現在の財政改善にしか目を向けないのは、将来世代に対する責任のない行為であると吉野先生はしています。

同じ指摘を、「埋蔵金問題」として一時期もてはやされた特別会計の剰余金処分問題にもされています。

埋蔵金問題とは、一般会計ではなく特別会計内に残っていた剰余金や積立金の処分に関する問題ですがこれが、2000年代後半から、一般会計や予算に利用されてきました。

これも先程の国有財産の話と同じで

①これを今利用してしまえば、その時点で予算として利用できる

②これをしっかりと有効活用し、収益性のあるものにできれば、国家財政に長期に寄与します。

政治家としては、現時点で予算化してしまった方が、現役世代から支持が得やすいので短史眼的な①を選びがちですし、実際にそういう選択がされてきました。

本来は、これも将来世代に対する責任としては、中長期でしっかりと効果の出る利用方法を検討しなければなりません。

国有財産の処分、あるいは埋蔵金の活用については、現時点だけの判断ではなく
どのような利用方法をすれば将来世代に寄与することができるか?

という視点で議論をしてほしい

というのが吉野先生のメッセージです。

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トランプ大統領の貿易政策

2018.11.09(Fri)|カテゴリ:世界経済

前回ご紹介したアジア開発銀行研究所所長の吉野直行さんのメッセージです。

第1回目は、トランプ大統領の貿易政策についてです。

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トランプ氏は今年に入り、鉄鋼・アルミニウムなどで関税を賦課したり
中国からの輸入品に対して関税を賦課したり
貿易赤字の解消が、自国の産業保護や雇用の保護のために
米国経済に必要だという主張の元にこれまでのアメリカの貿易政策を大きく転換しています。

これに対して、日本はどのような行動を取ればよいのでしょうか?

それには、なぜこれまでのアメリカが自由貿易を選択し、それが世界経済にとって有効に機能してきたのかを考えてみます。

国際貿易の利点は、一番古典的な理論ではデヴィッド・リカードの比較優位論がわかりやすい説明になっています。(Wikipedia比較優位参照)

英国とポルトガルの2国で毛織物とワインの2つを生産して貿易することを考えてみましょう。

具体的には
1単位時間分だけ働いた場合の生産量を

       毛織物 ワイン
英国       36   30
ポルトガル   40   45

ポルトガルは、ワインと毛織物の双方に関して、
英国に対し両方とも生産量が大きいので絶対優位です。

しかし、毛織物に関してはワインよりも生産効率が良いという意味で英国の方が比較優位であり、ワインに関してはポルトガルの方が生産効率が良いという意味で比較優位です。

つまり、英国の絶対優位性と比較優位性とは異なるということになります。

この英国とポルトガル双方が貿易から利益を得られるとはどういうことなのでしょうか?

これも例として
各国の労働力人口と労働投入係数が、簡略化の為に、失業者が居ない場合を想定している場合を考えましょう。

下記のようにそれぞれの国が労働力を持つとします。

        労働力 毛織物  ワイン
英国     220    100   120
ポルトガル  170    90    80

そうすると各国の生産量は

            毛織物      ワイン
英国        100×36=3600  120×30=3600
ポルトガル     90×40=3600   80×45=3600
両国の生産量    7200        7200
合計
となります。

極端ですが、これを比較優位のある産業に偏らせて

        労働力 毛織物  ワイン
英国     220    220   0
ポルトガル  170    0    170

とすると各国の生産量は

              毛織物         ワイン
英国        220×36=7920     0
ポルトガル     0             170×45=7650
両国の生産量   7920          7650

となり、先程の両国合計の生産量を上回ります。

これは、各国の国際分業によって全体的な労働生産性が増大することを示し、
さらに、自由貿易を前提とした場合には両国が共に消費を増大させられることを示しています。

すなわち、比較優位にある財を輸出すると共に比較劣位にある財を輸入すれば、
絶対優位に関係なく貿易で利益を享受できるということを意味するのです。

単純に言えば、このような理屈で、各国が得意な産業に生産を傾斜し、自由貿易を進めていくのが世界全体の生産性の意味では良くなるということで、貿易が振興されてきました。

一方でトランプ大統領が取ろうとしている保護主義的な政策は主に

海外からの輸入の拡大は国内生産者の利益を損ねる
海外からの輸入の増加によって、国内の製品が売れなくなり、雇用が悪化する
海外から安価な商品の大量流入によって国内の生産の縮小→国内企業の工場の海外移転→国内産業の空洞化が生じる

といった国内の生産や雇用の問題から発生しています。
こうした、保護主義的な政策は、一時的にアメリカだけのことを考えると有効なのかもしれませんが先程の自由貿易の理論からすると米国以外の世界的には効率が悪くなり、経済成長の阻害要因になります。

なので、実際に政策を検討するためには、この自国の産業と世界経済の2つの方程式を連立で検討しなければならないのです。

しかし、現在のトランプ政権は、まるで自国の一つの方程式しか見ていないように見受けられます。

日本としては、こうした米国の保護主義的な政策についてWTO(世界貿易機関)などの国際機関を通じて、自由貿易の正当性を訴えていくのが一番の筋道だと思っています。

自由貿易のメリットという正論を国際機関の中で主張していけば、日本以外の主要国の賛同も得られると思いますし、米国も正論を受け入れざるを得ない場面が出てくるはずです。

次回は、国有財産の売却や埋蔵金活用の議論についてです。

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株式会社マネーライフプランニング 代表取締役 小屋洋一

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