【対談】「いま日本に必要な金融サービス」 – 前編 【対談】「いま日本に必要な金融サービス」 – 前編

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【対談】「いま日本に必要な金融サービス」 – 前編

柴山 和久さん
ウェルスナビ株式会社
UPDATE 2019.12.27

ウェルスナビ 柴山さんと考える
「いま日本に必要な金融サービス」 - 前編

対談者プロフィール

  • 柴山 和久

    柴山 和久

    ウェルスナビ株式会社(公式サイト)代表取締役CEO

    「誰もが安心して手軽に利用できる次世代の金融インフラを築きたい」という想いから、プログラミングを一から学び、2015年4月にウェルスナビ株式会社を設立。2016年7月に資産運用ロボアドバイザー「WealthNavi」をリリース。リリースから約5年3カ月となる2021年11月に預かり資産6,000億円を突破した。起業前には、日英の財務省で合計9年間、予算、税制、金融、国際交渉に参画。その後マッキンゼー・アンド・カンパニーに勤務し、10兆円規模の機関投資家をサポート。東京大学法学部、ハーバード・ロースクール、INSEAD卒業。ニューヨーク州弁護士。Forbes JAPAN「日本の起業家ランキング2021」Top 3に選出。著書に『元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いた これからの投資の思考法』(ダイヤモンド社、2018年)

  • 小屋 洋一 (聞き手)

    小屋 洋一(聞き手)

    株式会社マネーライフプランニング(公式サイト) 代表取締役

    1977年宮崎県生まれ、東京育ち。2001年慶應義塾大学経済学部を卒業し、総合リース会社に入社。中小企業融資を担当した後、
    2004年不動産流通業を行うベンチャー企業に転職。営業、営業企画等を経験し、2008年に退職。
    同年にAFPを取得後、独立し、個人富裕層のアドバイスに特化した株式会社マネーライフプランニングを設立。
    2010年にCFP®を取得し、現在に至る。

    <所属・関連団体>

    <SNS>

中学時代、経済に興味を持った2人が資産運用のプロフェッショナルに

−−個人の世帯や法人オーナーとの対面での相談を中心にライフプランのコンサルティングを行う小屋さん。
AIを使ったロボアドバイザーによる資産運用サービス「WealthNavi(ウェルスナビ)」を立ち上げ、これから資産を形成する若い世代に「長期、積立、分散の資産運用」を広めている柴山さん。
一見、まったく異なるサービスを展開しているよう見えるおふたりですが、古くからの知り合いと聞きました。

柴山和久さん(以下、柴山):じつは、中学・高校の同級生なんですよ。中1の時に同じクラスになったのが、小屋さんとの出会いです。同級生の人数が少なかったこともあって、みんな仲が良かったよね?

小屋:たしかに。

柴山:とにかくみんな真面目で、同質性の高い集団だった記憶があります。

小屋:でも、僕はそれほど真面目じゃなくて(笑)、本当に好きな事しかしていませんでした。興味があったのは、テニスと歴史と経済。

柴山:中学生が「経済」。

小屋:小学生の頃から株式に興味があったんですよ。当時はバブルの絶頂期で、今まで株を買ったことがなかった普通のサラリーマンも株を買い始めていました。それはうちの親も同じで、急に日々の株価の値動きに一喜一憂しはじめたんです。
 僕は、子どもながらにたくさんの人たちの心理を反映して動く相場をすごくおもしろいものだと思っていました。また、同じ頃に学校で社会の小沢先生が授業で経済学の基礎知識を教えてくれたでしょう?

柴山:たしかに、中学生の時にマクロ経済学を勉強したよね。古典派経済学とかケインズ理論、貨幣経済や有効需要をいかに創出するかなんて事を学んだ覚えがあります。

小屋:そうそう。あれで経済への興味が増していったし、それはたぶん僕だけではなかったはずです。実際、経済学者になった同級生が数人いますから。たぶん、中学時代が僕らの進路に影響を与えたと言えるんじゃないかな。だけど、柴山さんは学生時代に「自分が経営者になる」なんて想像していなかったよね? 大学を卒業して、財務省に入省したわけだし。

柴山:まったく考えていませんでした(笑)。公務員を9年ちょっと経験して、その後、経営コンサルタントを日本と海外で5年。それでも会社を起こそうと思ったことはなかったんですよ。

−−それがどうして起業することに?

柴山:私が独立した理由とも深く関わっているんですが、国際結婚をして妻の母国であるアメリカでコンサルティングをやるようになって驚いたことがあります。それはサラリーマン世帯だった妻の両親が20代の頃から個人向けの資産運用アドバイザーを利用していて、リタイア後には富裕層の仲間入りをしていたことです。

−−アメリカでは個人がアドバイザーから資産運用のアドバイスをもらうのは当たり前なんですか?

柴山:今は複数の選択肢がありますが、それでも個人向けの資産運用アドバイザーの顧客になるには通常3000万円くらいの資産が必要になってきます。
その点、両親がラッキーだったのは、まだ資産のほとんどない若い頃、会社の福利厚生でプライベート・バンクによる資産運用サービスを利用できたこと。近所にファイナンシャル・アドバイザーが引っ越してきて、ご近所付き合いの中でアドバイスをもらえるようになったこと。その結果、20代の頃からアドバイスに基づいて資産を運用したことで、リタイア後も経済的に恵まれた自由な生活を送っています。
私は妻の両親の話を聞いて、一般的な収入のサラリーマン家庭でも適切なアドバイスのもとで長期の運用を行えば、豊かな資産を築くことができるということにリアリティを持つことができました。この経験が今のウェルスナビの主力事業となっている「働く世代向けの資産運用サービス」につながっています。

働く世代の資産づくりは、貯金から長期投資へ

柴山:終身雇用で給料も普通に増えていた私たちの親世代には、資産運用の必要がなかったかもしれません。しかし、日本の働く世代の平均給与はじわじわと下がっています。これは世界でもめずらしい傾向です。終身雇用を中心とする日本型の経営が成り立たなくなり、年金不安も広がっている今、働く世代が将来に向けて資産を運用していくことがとても重要になってきました。

−−コツコツと貯金しているだけでは、老後の暮らしが心許ないという感覚は一般的になってきた気がします。

小屋:日本でもようやく個人での資産運用が必要だという認識は広がってきたのを感じます。ただ、対面での資産運用の相談に乗っていて感じるのは、まだまだ「なぜ、長期、積立での投資が有効なのか」、「なぜ、分散することが大事なのか」といった資産運用の世界的なスタンダードが理解されていないということ。まずはその認識を海外の基準に引き上げ、多くの人にスタート地点に立ってもらうのが僕らの仕事のひとつだと思っています。

柴山:実際、若い世代が「資産運用を……」と考えたとき、いい選択肢が少ない状況があります。これはつい最近まで日本ではニーズがなかったからです。書店に行っても、資産運用の王道と言える「長期、積立、分散」を紹介する本は少なく、目立つのは個人投資家の成功体験に基づく投資指南本。でも、誰かのうまくいった方法に再現性がないことは複数の研究で明らかになっています。
例えば、金融危機が訪れたとき、恐怖心からパニックになって売ってしまうなど、投資には心理的な罠が多く、個人が自分で長期の資産運用を成功させるのは大変なこと。だからこそ、誰かがいいサービスを立ち上げなければと考えて立ち上げたのが、ウェルスナビです。
とはいえ、起業前は不安もあって小屋さんところへ相談に行ったのを覚えています。

小屋:そうだったね。でも、起業前プランを聞いての第一印象は「本当にいいタイミングだな」でした。僕はフィナンシャル・プランナー(FP)業界に長くいて、この業界にも多様性が求められてくることを肌で感じ始めていたから。ウェルスナビの事業には合理性があるし、時流にさえ乗れれば大丈夫だと思えた。だから、あっさりと「やったら」って言ったんです。

柴山:たしかに、拍子抜けするくらい簡単に「やったら」と背中を押してくれました。

小屋:ロボアドバイザーによる「長期、積立、分散」での資産運用。それも少額から始められて「働く世代向け」というサービスは間違いなく必要ですし、ニーズがあると思ったからです。

−−柴山さんのウェルスナビは、完全にオンラインでのサービスです。一方、小屋さんは対面での細やかなアドバイスを大切にされています。

小屋:お互いに想定している顧客像が異なりますし、利用者側のニーズも違うと思います。投資環境で先を行っているアメリカの事情を見ても、大切なのは日本でもお客様のニーズによってさまざまなモデルが展開されていくようになることです。

柴山:すでに資産のある層に対して対面できめ細やかなアドバイスを行うアドバイザーが求められる一方で、オンラインのサービスをおりまぜ、もう少しカジュアルにアドバイスを提供していく事業者もいる。日本も今後は、そんな状態に近づいていくのではないでしょうか。

小屋:最近のアメリカではウェルスナビのようなロボアド(ロボットアドバイザー)での運用の提案と、アナログな対面型のアドバイザーを組み合わせた「ハイブリッド」が一大マーケットになっています。私も福岡のお客様とは契約時のみ対面で、その後はZOOMなど、オンラインでアドバイスをしていますし、日本でもこれからはいろいろな金融サービスの融合が進んでいくはずです。

後編へつづく

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