占部伸一郎さんと考える
「人的資本」の高め方-前編

今回は、1986年に国内初の独立系経営戦略コンサルティングファームとして設立された「コーポレイトディレクション」のExecutive Consultant、Group Board Memberである占部伸一郎さんをゲストに迎えました。

大学時代に出会い、今では小屋さんのクライアントでもある占部さんはコンサルタントとして、モバイル、インターネット、通信関係、流通小売、不動産業界など、幅広い分野で中期計画の策定、新規事業の立上げ、組織改革などに取り組んできた経験の持ち主です。

そんな占部さんと語るのは、コンサルタントの仕事が作り出す付加価値と人的資本の高め方、そして一個人としての資産運用との向き合い方について。長い付き合いの二人だからこその本音ベースでの対談になりました。

 

対談者プロフィール

  • 占部 伸一郎

    占部 伸一郎

    株式会社コーポレイトディレクション
    エグゼクティブコンサルタント

    東京大学経済学部卒。三菱商事への出向経験あり。コーポレイトディレクションにおいて、テレコムネット関係、流通小売分野、不動産分野などの幅広い分野において、中期計画の策定、新規事業の立上げ、事業再生支援、組織改革などに取り組んでいる。近年は、日本企業の中国を中心とするアジア展開戦略や、マネジメント体制の再構築に取り組んでいる。

  • 小屋 洋一 (聞き手)

    小屋 洋一(聞き手)

    株式会社マネーライフプランニング 代表取締役

    1977年宮崎県生まれ、東京育ち。2001年慶應義塾大学経済学部を卒業し、総合リース会社に入社。中小企業融資を担当した後、
    2004年不動産流通業を行うベンチャー企業に転職。営業、営業企画等を経験し、2008年に退職。
    同年にAFPを取得後、独立し、個人富裕層のアドバイスに特化した株式会社マネーライフプランニングを設立。
    2010年にCFP®を取得し、現在に至る。

どうしてコンサルタントは給料が高いのか?

小屋:占部さんとは大学時代、4年生の春くらいに外資系コンサルティングファームのインターン生同士として出会って。卒業後、僕は別の業界に進みましたが、占部さんは戦略系コンサルティングファームであるコーポレートディレクションでコンサルタントになられた。

占部:小屋さんが勤めていた会社のコンサルティングに関わったこともありますし、マネーライフプライニングを立ち上げてからは資産運用のアドバイスをしてもらっていますし……もうかれこれ20年以上の付き合いですよね。

小屋:そこで、今日はいきなり突っ込んだことを聞いていきたいんですが。一般的にコンサルタントは給料が高いイメージがあります。実際、高いのも知っているわけだけど、どうしてコンサルタントは給料が高いんでしょうか?

占部:そういう質問から始まるんですか(笑)。

小屋:好奇心からでもあるんですが、じつは個人の資産運用では「人的資本」が重要な要素なんですね。人的資本は、その人が労働によって将来にわたって生み出すことのできる収入の期待値のことですが、例えば、年収700万円で35歳の会社員の方がいて、定年退職まで25年とした場合、人的資本はざっくり、700万円×25年=1億7500万円となります。
もちろん、実際には退職金をプラスしたり、独立や転職で収入が変化したり、病気になってしまうといったリスクも計算したりするわけですが、シンプルに言うと、人的資本が豊富なほうが資産運用は有利になります。

占部:たしかに。

小屋:就職したばかりの若い人は収入が低いところからスタートすることがほとんどですが、コンサルタントは例外といっていい職種です。仮にファストフード店で24時間アルバイトをしても年収1000万円には届きません。若い頃から人的資本が豊かでいられる仕事には、どんな理由があるのか。もちろん、付加価値が高い仕事だからなのだと思いますが、そういう視点からの「どうしてコンサルタントは給料が高いんでしょうか?」という質問です。

占部:なるほど。まず、コンサルタントの仕事は基本的に相談を受けて、答えることです。単純化して言えば恋愛相談、人生相談、各種の悩み相談と流れは同じと言ってしまってもいいでしょう。ただし、扱っているテーマが違います。企業が重要な意思決定をするとき、うまくいった場合に得られる金額の大きさ、失敗した場合に失うことになる金額の大きさは他の相談と比べると、桁違いです。
私たちの仕事は、そんなインパクトの大きな意思決定や実行の成功確率を上げること。企業は「コンサルティングによって将来的に何億何十億円も儲かるかもしれないのなら、コンサルティング料として数千万円のコストはかけてもいいよね」と考え、それが高いフィーにつながっているのだと思います。

小屋:本人にとって恋愛相談の真剣度がいくら高くても、何十億、何百億単位のお金を使う人はいないけど、企業の意思決定では大きな金額が動く。そのボリュームが大きいから報酬も高くなる、と。一般的に年収が高いイメージのある外資系の金融機関も扱っている金額は数千億円だから、1%の儲けが数十億円になり、そのなかで担当者の報酬が決まってくるわけですね。

占部:基本はそういう構造だと思います。

小屋:となると、もしこれから社会に出る若い人が自分の人的資本を最初からある程度、豊かにしたいと思ったら、扱う資金量が大きい業界に入り、意思決定に関わる仕事に身を置くのが良さそうですね。

占部:そのアドバイスは「たしかにそうだね」と思う一方で、コンサルタントの給料は平均的なサラリーマンよりは高いですが、投資銀行やファンドなどの金融業界に比べるとそうでもありません。これはコンサルティングという仕事が、労務、時間を使ってサービスを提供し、それに対する対価をもらっているから。結局、人月ビジネスで、時間単価は高いけど、限界はあります。
給与水準だけを追求するなら、金融業界に飛び込んだり、自分で会社を作って成功させたりという可能性を追ったほうが、得られる額の桁も違ってくると思います。

 

社長の視点で物事を見る経験の積み重ね。それが戦略系コンサルタントの付加価値に

占部:人的資本に関係してもう1つ言えるのは、短期的な収入の大きさよりも、その仕事を通じて自分のスキルが貯まり、磨かれ、将来的に活用できることも大事ですよね。特に若い頃の給料の多い少ないは、生涯収入から見ると小さな差です。
今はこういう言い方をすると嫌がられるかもしれないけど、若いうちは給料が安くて苦労しても、厳しい環境で経験が積めたり、技術が身についたり、人との出会いが広がったりといった仕事に打ち込んだほうが絶対に生涯収入は多くなり、人的資本も豊富になっていくと思います。

小屋:コンサルタントはどうですか?

占部:コンサルタントは会社には属していますが、クライアントから個人が指名され、その問題解決力を売っていくわけですから、別のビジネスや業種に移ったとしても応用が利くところは大きいように思います。

小屋:それはどのタイプのコンサルタントにも共通する話ですか? 

占部:今、僕が念頭に置いて話しているのは、自分が属している戦略系コンサルティングファームです。僕らは毎回、異なる課題を抱えた違う業種のクライアントから相談を受けます。そこで、より良いと思えるやり方をみつけ、提案し、一緒に実行していくわけです。その過程で、そもそもこの事業はどういう進め方をしたら勝てるのか、この会社の問題点はどこにあるのか、などを企業の医者として診察し、この症状ならこの薬を飲んだほうがいい、手術したほうがいい、食生活を改善したほうがいい、とアドバイスしていきます。つまり、1つ1つのプロジェクトの経験が積み重なることで、事業を見る目や課題を発見しそれを解決するという力が養われていき、スキルが貯まってくわけです。
一方で同じコンサルタントという呼び方でも、すごく専門性の強いコンサルタントもいます。知財に強い、ITに強い、会計に強いなど、このタイプのコンサルタントは専門性が磨かれるという方向でスキルが増していくので、スペシャリスト的に付加価値を高めていくことができるはずです。

小屋:そういうスペシャリスト系に対して、戦略系のコンサルタントはゼネラリスト的なんですね。

占部:僕は取材で「戦略系コンサルはどんな仕事ですか?」と聞かれたときは、「社長が悩んでいることに答える仕事です」と答えています。社長の悩みは組織のことだったり、先々の戦略であったり、M&Aであったり、後継者問題であったり、さまざまです。
その悩みに答えるには、社長の視点、事業責任者の視点で物事を見る必要があります。その経験の積み重ねが戦略系のコンサルタントの付加価値になっていくわけです。

 

「個人」が立つ仕事環境に飛び込むことで人的資本が豊かになる可能性が高まる

小屋:占部さんがコンサルタントとして、付加価値のある存在であるために、また人的資本を落とさないために、心がけていることはありますか?

占部:難しい質問……本当に目の前の仕事を一歩、一歩ちゃんとやることですかね。当たり前の答えかもしれないけど、それ以外は思いつかないかもしれない。

小屋:それがちゃんと積み重なってくと、クライアントからの信頼も高まっていく?

占部:限界まで考えることが自分の思考にもプラスになるし、クライアントの信頼も得られるということだと思います。ちゃんとやっていると数年後に同じクライアントから「また相談したい」と声がかかるようになり、その状態が続くことでコンサルタントとしてやっていける面はあると思います。本当に困ったときに声がかかる存在になれるかどうかですよね。彼/彼女ならこの課題の解決に長けているのではないか、最後まで寄り添ってくれるんじゃないか。そんな期待感を持ってもらえる仕事をすることで、ここぞ、というときに顔が浮かぶ存在になれるんじゃないかと思います。
コンサルタントを辞めたとしても、クライアントとの間に築かれた信頼関係は会社ではなく個人に付いているものだから、絶対にプラスになるんじゃないかと思います。
だから、仕事をしながら信用貯金を貯めているという感じはありますね。

小屋:クライアントとの関係性が会社ではなく、個人に付くという感覚はコンサルタント業界では一般的ですか?

占部:これはファームによると思います。会社が提供するソリューションに決まったものがあって、それを売っているコンサルティングファームもありますから。でも、僕らのファームは基本的に「コンサルタント一人ひとりが個人事業主の集まりです」という雰囲気なので、会社の看板の力はあるものの、個人を信頼していただいて仕事を依頼されるという感覚です。

小屋:普通のサラリーマンよりは確実に個人が立っている。

占部:それはもちろんそうです。コンサルタント業界全般が、他の業界よりも個人が立つ仕事であることは間違いないです。人的資本の話に戻せば、その意味で、若いうちから個人に資本が蓄積しやすい、ということで学生から人気の職業になっているんだと思います。若い頃に「個人」を立てるのが当たり前の環境に飛び込むことで、仕事に対する当たり前の水準が上がるからです。求められる水準が高い環境にいることで鍛えられ、引っ張られていく。そうして身についた力は他の業種に移ったとしても役立ちますので、人的資本という意味でもプラスになることが多いように思います。

後編へつづく

※当記事の対談は新型コロナウイルス感染防止に十分配慮しながら行っております。また、撮影時のみマスクを外すご協力をいただきました。

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