資産運用
日頃、中小企業のオーナー経営者さんの「お金」の相談を受けていると
よくある悩みというのが見えてきます。
今日は特に相談の多い役員報酬の設定について取り上げたいと思います。
役員報酬の設定について
オーナー経営者である方々は、ご自身の役員報酬を自分で決めてもちろん構わないわけですが
いくらに設定するのが妥当なのか?
という事について悩んでいます。
多くの方は、顧問の税理士さんに相談したりするのだと思いますが、税理士も
経営者のプライベート(家庭)でのお金の支出や管理などには触れていないために
適切な家計の収入というものについてはあまりアドバイスができません。
FPである、私から見ると役員報酬は
・家計の支出をカバーできるような設定である
・個人に資産を残すのと法人に資産を残すのがどちらが良いか考える
・経営スタイル
という3点から検討とアドバイスをします。
1)家計の支出をカバーできる設定である
経営者と言えども、家庭においては個人ですので、家計の収入として不足するようでは困ります。
そこで、生活費、住居費、教育費など一個人としての家計の支出を算出し、
少なくとも家計支出はカバーできるレベルがどの程度の収入であるかを検討します。
家計の支出レベルは、各人それぞれなので数百万円で足りる人もいれば、
数千万円もらっても不足する人まで幅広く存在します。
2)個人に資産を残すのと、法人に資産を残すのがどちらが良いか考える
100%オーナーである経営者にとってみれば、個人で資産を保有しても、会社で資産を保有しても
会計上の意味合いで言えば、どちらも同じ話になります(経営判断などは異なります)
この時、役員報酬の設定において、資産形成に差が出てくるのは税金の話になります。
役員報酬は、当然として個人にとって給与所得となり、所得税、住民税の対象になります。
所得税の税率は
課税される所得金額 税率 控除額
1,000円 から 1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円 以上 45% 4,796,000円
で、住民税は全ての所得で所得税とは別に10%です。
一方で法人税の税率は、中小企業の実効税率で約33%程度になっています。
そうすると、役員報酬を高くして、課税所得が900万円を超えてくると所得税・住民税で43%課税され
役員報酬を取らずに会社に利益として残すと法人税として33%課税されます。
つまり、課税所得900万円を超えてくると、役員報酬を上げるよりも、会社に利益を残しておいた方が
10%程度課税が少なくなり、お金は溜まりやすくなります。
3)経営スタイル
1)2)の視点に加えて、最後は経営スタイルについても考え方が分かれます。
ここでは、会社に入っているお金は誰のものなのか?
という視点です。
会計上や理屈の上では株主である経営者のものと考えて良いですし、それで問題もないケースも多いのですが
社員や取引先が増えてくると、会社のお金は、ステークホルダー全員のものであるという考え方も出てきます。
そのように考える経営者は、会社に資産があっても、なかなか自分個人のものとは思えないものです。
その場合には、税率の話はあるが、やはり個人として資産形成できるレベルの役員報酬を取ることを検討します。
小屋は個人的には、後者の考え方に近いので、会社のお金と個人名義のお金は分けて考えたいタイプです。
ビジネス的なものはあまり展開していない、個人の資産管理会社的な会社であれば、あまりこの問題は生じません。
上記の3点について、経営者とコミュニケーションをとりながら役員報酬を決めていけば、適正な役員報酬の設定に
なると思っています。
オーナー経営者の方の参考になれば幸いです。