保険
こんにちは、松本です。
日々、金融や経済に関する情報をまとめています。
今年の2月に子どもが産まれたこともあり、
これから教育費のことを考えることも多そうなので、
今回は学資保険をテーマにしました。
ちなみに子どもは7か月が過ぎ、
最近はお座りができるようになり、
動きも活発になってきました。
抱っこ紐やベビーカーで少しずつお出かけできるようになり、
嬉しい限りです!

普段は愛強めパパをやっている私ですが、
仕事では法人オーナーや個人のお客様向けに、
資産運用や保険分析、不動産購入、売却相談、
相続対策に至るまで資産周り全般の相談に乗っています。
お客様の加入している保険について
質問を受けることも多いです。
今回は教育費という観点で、
学資保険って必要?不要?
という話をフラットな目線で分析していきたいと思います。
ぜひ最後までご一読ください!

学資保険は「子どもの進学時期に合わせて教育資金を
準備するための保険」と言われています。
子どもが小さいうちから毎月一定額の保険料を払って、
大学入学などのタイミングで満期金(途中で祝い金などある商品も)
が支払われる仕組みです。
保険期間中に契約者である親が死亡したときなど、
万一の場合(保険条件によります)、それ以降の保険料の払込が免除となり、
学資保険の保障がそのまま継続され受け取ることができるという特徴もあります。

学資保険という商品を分解すると、
以下の2点に分けることができます。
①死亡保障・・・親の死亡時にも保険金が下りる(教育資金が準備できる)
②貯蓄機能・・・満期あるいは途中でお金が貰える
図式化するとこんな感じですね。

学資保険の必要性について議論する場合
① 死亡保障の分析
② 運用商品としての貯蓄機能の分析
上記2点を考える必要があります。

それではまず死亡保障から。
子どもがいる親の死亡保障は必要になる場合が多いです。
例えば、上の写真のような3人家族を想定してみましょう。
父が無くなれば、母と娘2人が残されることになります。
親の死亡保障で必要な金額は、
遺族が使う資金 / 遺族が得る収入と今ある資産合計
この差額部分になります。
具体的には、
<遺族の支出>
子どもの教育資金+生活費+家賃(賃貸の場合)等
<遺族の収入>
母親が稼ぐ収入+年金+現在の貯蓄等
この差分が、必要保障額=保険で賄った方が良い金額になります。

図式化するとこんな感じです
話を戻すと、学資保険の多くが死亡保障200万円~300万円というものが多く、
親の死亡保障としては不足する場合が多いと考えられます。
家計によりますが、死亡保障は何千万円単位になることが多いので、
学資保険の死亡保障300万円を手に入れてもそれだけでは足りないことが多いと考えられます(一般論)
よって、学資保険の‘’親の死亡保障部分‘’に関しては足りないことが多く、
死亡保障だけを考えるなら、掛け捨ての収入保障保険等に入った方が合理性が高いと考えられます。

学資保険の中身①の「親の死亡保障」は
必要だけど足りなそうだと分かりました。

次に貯蓄性について見てみましょう。
保険料を払ったらどのくらい貯まるの?
という話ですね。

右下の話
よくある学資保険のセールスコピーは
「返戻率120%!」という類のものです。
ここが金融機関の上手いところです。
「120%というと普通預金より良さそう!」
と思った方は少し立ち止まってください。
ここで保険会社の言う返戻率について、
一緒に考えてみましょう。
返戻率とは、払った保険料合計に対して
将来いくら戻ってくるかという単純な比率です。

計算式としてはこんな感じ。
例えば、総額200万円払って240万円戻ってくるとすれば
240万円÷200万円×100=返戻率120%という仕組みです。
払った総額に対して120%は戻ってくる。
決してコピーライティングが間違っている訳ではないです。
ですが、運用の世界ではこの表現は不適切です。
不適切というか不親切です。
なぜなら、金融商品の運用性の比較は
「年率利回り」で検討しないと意味がないからです。
A:18年間で120%の返戻率になる金融商品A
B:39年間で220%の返戻率になる金融商品B
期間が異なる運用商品の比較はぱっと見難しいですよね?
期間が異なる運用商品の比較は、
返戻率ではなく年間利回りで比べることができます。

実際の学資保険を例に検証してみました。
某保険会社でこんな学資保険がありました。
払込期間:1才~17歳
保険料:1.9万円/月
満期保険金:300万円(18才)
死亡保険金:300万円
祝い金:15万円(5歳)、30万円(11才)、45万円(14才)
祝い金というのは、
その年齢時点で生きていれば貰えるお金
という認識で良いと思います。
さてこの学資保険の運用商品性はどうでしょうか?
ちなみに先程の返戻率を計算すると、
貰える総額÷払った総額×100
(15万+30万+45万+330万)÷(1.9万円×12ヶ月×17年)×100=100.5%
払った額よりちょっとだけ増える感じですね。
次の「1年でどのくらい増えているの?」
で詳しく解説してきましょう!
この学資保険のお金の出入りを表にしてみました。
お金の出入りというのは、こういうことですね。
出:支払い保険料
入:祝い金(途中生きていたら貰える)
満期保険金(18才で生きていたら貰える)

表にするとこんな感じです。
横軸は子どもの年齢なので時間推移です。
縦軸はお金の流れ。
例えば5歳の時は
1.9万円×12ヶ月=23万円支払って
15万円の祝い金を貰うので、
収支は-8万円というイメージですね。

これを18年間繰り返すのが学資保険という商品です。
そしてこの18年間のお金の流れを、
「1年あたりどのくらいの利回り」で推移したか
という表に計算したものが右下のIRRというものです。
この学資保険は、
年間0.082%で増えていく運用商品だと分かりました。
(あくまで例として挙げた商品の話)
ではこれが運用商品としてどうかという話です。
運用の世界(ベーシックなインデックス投資)では
外国株式の年率リターンは7~8%程度
外国債券は4~5%程度
日本株式は2~3%程度だと考えられています。
比較すると明らかですが、
1%未満の利回りは、運用性はかなり低いと考えられます。

学資保険の利回りが低いのは分かった。
では何をすればよいのでしょうか。
18年という長い期間を取れるなら、
株式や債券中心の投資信託で運用していく方が良いと考えています。
預金比率の高い日本では、
「学資保険は貰えるお金が決まっている」けど
「運用は大損するかもしれないじゃないか」
と考えられる方も多いと思います。
勿論株式投資は預金に比べてリスクは有りますが、
18年という期間を考えてみると
比較的長期での運用が可能だといえます。

金融庁による積立投資の分析によると、
保有期間が5年では運用収益がマイナスになるケースもありますが、
20年程度の期間を取ると分散投資のリターンはプラスに収斂するというデータが出ています。
学資保険はあくまで貯蓄の代わりのような金融設計ですので、
利回りは低いですが、確実に学費が準備できるという利点もあります。
その辺りはリスク許容度も考慮して、検討する必要があるでしょう。

最後にキャッシュフローの重要性も強調します。
こどもの教育費という観点でいうと、
最もお金が掛かるのは大学費用です。
子どもの誕生~大学入学までの18年間
家計が黒字で回っていくのであれば、
先に述べた原理の通り、積極的に株式等で運用に回していくのが良いと考えます。
その年の収入の中から教育費を捻出していくイメージです。
しかし、途中で赤字が続いてしまう。
あるいはどこかで赤字家計になってしまうのであれば運用以前の問題となります。
そのため、家計のお金の流れ(キャッシュフロー)も考える必要があります。

今回のお話では学資保険の商品性を分析してみました。
「教育費」だけ切り出して考えるのではなく、
お金の問題は資産全体をトータルで行う必要があることも最後に伝えたいです。
教育費を考える際には、
・相談者はあと何年働けるのか
・家計の収支は黒字か赤字か
・資産側に運用資金余裕はあるのか
・親の保障は過不足ないか
などを総合的に分析する必要があります。
教育費については親であれば皆さん考えることも多いでしょう。
‘’教育費‘’を切り分けて考えるのではなく、
本来であれば、お金に色を付けずに家庭のお金の流れと資産状況を見ながら
フラットに考えていく必要があります。
学資保険に関しては、
死亡保障と運用性の2つの観点から考えるに
そこまで加入する必要性は低いのだと言えます。
ただ、子どものいる家庭の親の死亡保障については必要になることが多いので
別途考えていく必要があります。
ちなみに私の両親は学資保険で教育資金を準備してくれていたそうなので、
両親に対しては感謝しています。
何も全て批判するわけではなく、
これから加入する方にとって判断基準となれば嬉しいと思う次第です。
資産周りのお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度相談に来てください。
今日の記事は以上となります。
最後まで読んでいただきありがとうございます!