トピックス
人生100年時代という言葉が浸透し、企業型DCやiDeCoを活用して
「自分でつくる老後資金」が当たり前になりつつあります。
制度自体は成熟し、導入企業も増えてきました。
しかし、6月27日発表された金融庁の
「資産運用サービスの高度化に向けたプログレスレポート2025」を読みながら、
ひとつの違和感が強く残りました。
“制度として普及しているけれど、果たして、十分に活かされているだろうか?”
そんな問いから、今日は確定拠出年金を取り巻く構造的な課題と、
私たちが向き合うべき本質について考えてみたいと思います。
レポートによると、企業型DCでの運用資産の約30%(7兆円)が元本確保型商品。
しかも、そのうち2兆円分は「元本確保型だけ」で運用されているそうです。
これはつまり、約175万人が“減らない安心”のために“増やさないリスク”を
受け入れているということ。
インフレが進む今の時代、数字の上では減っていなくても、
実質的な購買力は年々目減りしていきます。
「老後資金を守っているつもりが、むしろリスクを増やしている」
――そんな逆転現象が起きているのです。
DCには、加入者が商品を選ばなかった場合に自動で適用される
「指定運用方法」があります。
実はこれが、約6割のケースで元本確保型商品。
あまり運用に興味が無い人は、
自動的に元本確保型になってしまう構造になってます。
レポートでも、こうした初期商品を老後に資金に
問題がないような商品を選択する必要があるとされていて、
今後は米国のようにターゲットデートファンドなどが
こうした商品に選ばれるような変化が求めされます。
加入者に商品を案内し、
教育も担う「運営管理機関」にも課題が指摘されています。
現在、運営管理機関の約半数は赤字。
人件費やシステム維持費を企業からの手数料だけではまかなえず、
加入者が負担する信託報酬の一部が実質的な収益源となっている構造です。
これでは、制度の持続性が不安ですし、こうした収益モデルの中で、
果たしてどれほど“中立な商品選定”や“質の高い投資教育”が実行できるのか――。
も疑問が生じます。
結果としてラインナップされている投資信託の中には、
系列運用会社の高コスト商品が多く含まれる傾向になっています。
本来は、「コスト対パフォーマンス」や「長期投資の成果」といった視点で、
加入者自身で商品内容を吟味する必要があるのです。
制度の裏方でデータや資産の記録管理を行うレコードキーパー(RK)にも、
持続性への不安があります。
システム維持・更改にかかるコストが高騰し、
現行の手数料体系では将来的な安定運営が難しいという声も出ています。
この課題はすぐに顧客の不利益につながるものではありませんが、
制度全体の「安心・安全な基盤」が揺らいでいるという点では、
決して軽視できません。
ここまで見てきた通り、
確定拠出年金は「制度として用意されていること」自体がゴールではありません。
自分の老後の資産を他人に任せきり、関心薄く放置するだけでは、
自分の将来を守りきることはできない時代です。
・いまの配分は、自分のライフプランに合っているだろうか?
・インフレに耐えうる運用設計になっているか?
・不要に高コストの商品に偏っていないか?
こうした問いかけを、定期的にしていくこと。
それがDC制度を“資産形成のツール”として生かすための第一歩です。
金融庁はレポートの中で
「顧客の最善の利益」を軸とした制度運営の重要性を強調しています。
しかし現実には、運営側・制度側の事情が色濃く残っているのが今の姿。
だからこそ、私たちは一人ひとりが「制度の本質」と
「自分の目的」を重ね合わせる視点を持つことが求められます。
DCやiDeCoの運用状況を見直したい方、
もっと自分に合った設計を知りたい方は、ぜひ一度ご相談ください。
「未来のお金」を守るには、「今の行動」が必要です。