レポート

セミナー報告

子ども時代から積み重ねる金融教育のポイント

UPDATE 2023.01.26

2022年12月9日金曜日19時~21時

銀座ユニーク貸会議室 銀座7丁目店にて開催した第8回セミナー「どうやって教える? お金のこと」の活動報告です。

 

40代、50代のクライエントさまの中には、「子どもにお金や金融のことをどう教えたらいいのか悩んでいる」という方も多いのではないでしょうか。今回は、子ども向け・親子向けの金融教育を多方面で行っている2人組のファイナンシャルプランナー、キャサリンとナンシーをお呼びし、おふたりが普段、小学生や中学生にお金や投資のことをどのように教えているのかお話を伺いました。

 

金融教育は幸せに生きるための教育

 

現在、国は「貯蓄から資産形成へ」という流れを推進しています。このような情勢の中で金融教育の必要性も高まってきました。教える内容についても、資産形成や投資信託など、より幅広い金融知識を教えることが求められています。しかし教科書を見ると、わずか数ページの内容しかなく、継続的、体系的に学べるようにはなっていません。国民の金融リテラシーを向上させようと思うと、学校教育だけでは難しいのが現状なのです。「行政や民間企業、あるいは一般のご家庭、みんなで力を合わせて金融リテラシー向上を目指す流れを作りたいです。そうすることで、日本の資産の有効活用や、国の豊かさの向上にもつながると考えています」と、ナンシーさんは話します。「知識があれば金融商品に対してきちんと判断できます。私たちは、間違った判断をして後悔する人をなくしたいんです。金融教育はwell-being、つまり人間の幸せに直結する教育ではないかと思っています」

子どもに向けた経済・金融教育のポイント

 

「スイミング教室って、お金が必要なの?」

ナンシーさんの息子さんがまだ小さかったころ、スイミング教室に通っていた息子さんがナンシーさんに言いました。教室の月謝は口座引き落としのため、お金を払っていることが息子さんには見えなかったのです。

キャサリンさんは言います。

「生活にかかるお金にはこんなものがあると、ぜひ伝えてください。お金を見える化してあげるのです」

ポイントとして、「これだけしかお金がないから、○○しかできない」ではなく、「これだけのお金があるから、○○ができる」と、ポジティブに伝えることが大切です。ここで伝えたいのは、使えるお金には枠があるということです。だから、枠内であれば、人道的に外れていたり法にふれたりしない限り、何に使ってもいいということも話します。

もう一つポイントとなるのが、お金のニーズとウォンツです。お金の使い道には、「ニーズ=食べ物や電気、電話など暮らしていくのに必要なもの」と「ウォンツ=ほしいもの」の二つがあります。子育てをしていると、子どもが何かをほしがったときに「ダメ!」と反対する場面はたくさんあります。その背景には、金銭的なタイミングや教育的な理由などがあると思いますが、子どもにはそのようなことは分かりません。「おうちにお金があるのに、なんでダメなんだろう?」と思うのです。そこで、「大人はまずニーズのためにお金を使っている、先にウォンツのためにお金を使ってしまうとニーズにお金が払えなくなってしまう」、つまりお金の優先順位を分かってもらうことが大切なのです。だいたい小学3年生ごろを目安に伝えるのがいい、と2人は言います。

子どもが中学生になったら、給与明細を一緒に見てもらうのもおすすめだそうです。金額を額面そのままに受け取れるわけではないことを知ってもらい、そこから、社会保険や税金に興味を持ってもらうのです。

「私たちは、基本的には10年間で積み上げていく教育を考えています。小学生では家庭の中のお金を見て、中学生になったらもう少し広い視野で社会を見てもらう。高校生からは社会保険の話を出します。中学生までにある程度興味を持っておいてもらうことで、詳しく分かってもらえると思います」(ナンシー)

 

子どもに向けた投資教育のポイント

 

投資教育もまた、小学生のころからから少しずつ積み重ねて行っていきます。

小学生の段階では、「株式会社」が自分たちの周囲にはたくさんあることを知ってもらいます。具体的には、身の周りにある製品や提供されているサービスから、どんな株式会社があるのかを見つけていくワークをします。

中学生になると、これらの株式会社がどのようにお金を集めているのかを説明し、「銀行から借りる」「株式を発行して買ってもらう」という2つの方法があることを知ってもらいます。また、債権についても説明します。

「株式は、自分では使わないお金を会社に投資する仕組み。債権はお金が必要な会社に貸す仕組みだと話します。株式と債券の仕組みが分かっていないと投資信託も分かりづらいと思います。投資信託の話をするとき、まず、株式と債券は一つの会社に投資していくものと教えます。そして、選ぼうとしている会社がうまくいくかどうかは分からないし、もしかしたら大きく損をしてしまうかもしれないけれど、投資信託はそういった問題を防ぐために生まれたもの、と話しています」(ナンシー)

一つの企業に集中して投資するより、複数の企業に分散させて投資した方がリスクは少ないですが、一人でいくつもの企業に投資するには大きな資金が必要です。投資信託は、複数の人からお金を集めてまとまった大きな資金とすることで、複数の企業に投資することを可能にした仕組みです。

「私は、息子が小学生の時にコモンズ投信30に投資させていました。30銘柄がひとまとまりになっているので、どこか一つの成績がだめでもほかの29銘柄がよかったら大丈夫だよ、という感じで説明がしやすかったです」(キャサリン)

子どものころからの積み重ねが大事

 

現在、おふたりは大阪で、定期的な親子向けの株式講座も開催しています。単発での受講も可能ですが、多くの受講者は継続的に受講しています。受講者は教育の積み重ねと成長を感じているそうで、子どもが四季報を読めるようになってきた、親子でニュースを見て経済の会話ができるようになったなど、喜びの声もあがっています。

ナンシーさんは言います。「私たちは消費者か労働者の視点に陥りがちです。株式を買ってもらうことで、投資家、経営者として経営に参画していくという目線を持つことを教えています」

ナンシーさんは、息子さんが中学生になったのを機に株式を一つ買わせてみたそうです。

「教材費だと思って50万円を出しました。息子とは20歳になったら返してもらう約束をしています。プラス分は彼のお金にしてもらえばいいし、マイナス分が出たらそこは構わない、と言っています」

すかいらーく株を買った息子さんは、その後すかいらーく以外の会社の動向も気にするようになり、フードコートに行けば、『このフードコート、トリドールの店舗ばっかり』と気がついたりもしました。一つの企業の動向を気にするようになったことで、そこからいろいろなものが見えるようになった、とナンシーさんは話します。

「私たちは子どものころから『お金は大事だよ』と言われてきましたが、それが本当の意味で分かるのは、やはり働き始めた時だと思います。だからいまは、しっかり教えるというよりも将来のヒントを落としていく感じです。説明の中には、『厳密に言えば違う』こともあるかもしれません。でも、子どもたちにざっくりと分かってもらうことと、何よりおもしろいと思ってもらうことが目的です。『それだけ分かっておいてくれれば、そこから先は子どもが自分で知っていく』ので、ポイントを伝えてアシストしていくのが私たちの仕事だと思っています。のちのち子どもの中で、『あっ、こういうことだったんだ』と、点と点が線でつながっていけばいいですね」