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東証の見学と、取引所の「稼ぎ方」

UPDATE 2026.10.15

先日、東京証券取引所の見学に行く機会がありました。

私の主宰するFP向けの勉強会でレクリエーションもかねて、見学会を企画しました。

 

見学にあわせて、東証の現在置かれている状況についても考えてみました。

 

その最初に、皆さんに投げかけた問いがあります。

 

Q:「東証は、世界で何番目の取引所か?」

 

皆さんは、何番目だと思いますか。

 

 

物差しによって、答えが変わります

実はこの問い、物差しによって答えが変わります。

・市場の大きさ(上場企業の時価総額) 約7.8兆ドル 世界の上位

・新規の資金調達(IPO、2025年) 上位4市場の外

・取引所会社の価値(JPXの株式時価総額) 約150億ドル 12位前後

 

上場している企業の合計は、世界の上位。

でも、取引所という会社そのものの評価は、12位前後です。

 

首位の米国CMEは約950億ドル。

JPX(8697)は、その6分の1以下です。

 

市場は大きい。しかし、会社の評価は小さい。

この差は、どこから来るのでしょうか。

 

取引所の稼ぎ方は、3つの型

世界の取引所を「何で稼いでいるか」で分けると、大きく3つの型になります。

 

① 情報・テクノロジー会社型

ロンドンのLSEG、米国のICEやNasdaqなど。

主力はデータ、指数、業務ソフトです。

LSEGは収益の47%がデータ・分析です。

 

② デリバティブの胴元型

米国のCMEなど。

世界の基準になる金利や商品の先物を押さえています。

 

③ 成長市場の取引量型

インドNSEや香港取引所。

個人や中国本土の資金で、取引量を急拡大させて稼いでいます。

 

①の会社は、相場が悪くても入ってくる継続課金の収益が厚い。

だから、会社としての評価が高くなります。

 

東証は、どの型か

JPXの2025年度の営業収益は1,987億円。

内訳は、

 

・株式の売買など(エクイティ) 60%

・情報(相場情報・指数ライセンスなど) 17%

・金利 15%

 

営業利益率は58.5%、ROEは23.1%。

効率は、世界の取引所の中でも上位です。

 

ただ、収益の6割は日本株の売買次第。

データ収益の比率は17%で、LSEGの47%には遠く及びません。

 

効率は世界水準。でも、稼ぎの大半は国内の売買。

いわば「国内型」の取引所です。

 

JPXも中期経営計画で、データサービスの強化や海外の取引の取り込みを掲げています。

ただ、型Aの各社は数兆円規模の大型買収でそこに到達しました。

自前の積み上げだけで届くのかは、大きな論点です。

 

取引所は、インフラです

ここで、少し視点を変えてみます。

 

取引所は、電気や水道、鉄道と同じインフラです。

 

止まれば、日本中の投資家と企業が困ります。

2020年10月には、システム障害で東証の売買が終日止まったこともありました。

 

一方で、JPXは上場企業です。

株主のために利益を上げることも求められます。

 

インフラが儲けすぎれば、そのツケは使う人に回ります。

手数料やデータ料金が上がれば、最後は投資家の負担になります。

海外では、取引所の相場データの料金が高すぎるという批判も出ています。

 

逆に、儲からなければ、システムや安全への投資ができません。

 

鉄道会社と同じです。

運賃を上げすぎれば、乗客は離れる。

投資を怠れば、事故が起きる。

 

大切なのは、「使う人が増えるほど、儲かる」構造になっているかどうかです。

 

儲けと利便性がずれるとき

このバランスが崩れた例が、インドです。

 

インドNSEは、取引手数料の76.6%が個人中心のオプション取引です。

取引所は大きく稼ぎましたが、個人の損失が社会問題になりました。

規制が強化され、2025年度のオプション取引は半減。

それでも個人の損失は、約9,200億ルピーにのぼります。

 

日本でも2025年度は、日経225オプションの取引金額が+34.8%と伸びています。

 

取引所の収益は、取引の回転に比例します。

でも、個人投資家の資産は、回転させるほど増えるわけではありません。

 

インフラとしての取引所に求められるのは、たくさん回させることではありません。

安心して、長く使ってもらうことです。

 

お客様のお金と、東証

私たちがお勧めすることの多い全世界株式のインデックスでは、

日本株の比率は1割未満です。

新NISAの資金も、多くは海外株に向かっています。

一方で、国と取引所は「資産運用立国」を掲げています。

 

私たちの考えは、「お客様の利益が先。東証の競争力は、その結果」です。

使う人にとって良いインフラであれば、お金は自然と集まってきます。

 

インフラを魅力的にするには、上場している企業が世界の多くで取引したいと思われる魅力を

持つことなのではないでしょうか?

 

皆さんは、取引所というインフラに、何を期待しますか?