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こんにちは、松本です。
先日、お客様からご相談をいただきました。
「資産運用の顧問になってほしい」というご相談です。
それに加えて、
「家族にも資産を承継しているので、資産運用について教えていってほしい」
というご要望もいただきました。
お話を伺うと、奥様や大学生のお嬢様にも既に
一定額(約1,000万円程)贈与されているとのことでした。
私はこの言葉を聞いて、単に運用商品を提案してほしいのではなく、
「家族が資産管理を自走できるようになってほしい」という
メッセージなのではないかと感じました。
相談者は現役世代のお客様ではありますが、
ご自身に万一のことがあった場合、あるいは将来的にお子様が独り立ちした後を見据えて、
資産管理ができるようになってほしいのではないか。
そんな風に捉えました。
またこの相談をきっかけに、
「ファミリーオフィスとは何を提供する存在なのか」を改めて考える機会になりました。
今回は、そんな金融教育の取り組みを通じて考えたことを書いてみたいと思います。
マネーライフプランニングでは近年、お客様との関わり方や対外発信において、
ファミリーオフィスに近い形を意識するようになってきました。
ファミリーオフィスとは、
富裕層一族やオーナー家の資産・事業・相続・家族間の課題などを長期的な視点で支援し、
世代を超えて資産と理念を承継していくための仕組みのことを指します。
その起源は、
資産家一族の財産管理を担っていた
古くからの執事や家令の仕組みにまで遡ると言われています。
一方で、現在のような専門家チームによる現代的なファミリーオフィスは、
19世紀後半のアメリカで、
ロックフェラー家などの資産管理を目的として発展したとされています。

日本で「資産家向けの資産サポート」というと、
・相続税対策
・贈与
・不動産活用
など、税務面でのテクニカルな話になりがちです。
「いかに相続税を少なくするか」がクローズアップされている印象があります。
もちろんそれらも重要です。
一方で海外のファミリーオフィスでは、
・投資、資産管理・運用
・タックスプランニング・会計
・エステートプランニング(遺言や資産承継)
・フィランソロピー(寄付や財団運営)
・ライフスタイルサポート
など、一族を取り巻く様々な機能を担っています。
その役割の一つが、次世代への金融教育です。
どのように資産を守るか。
どのように資産を増やすか。
それだけではなく、「次世代が資産と向き合えるようになるか」
という点まで含めて支援していることが特徴の一つと捉えています。

今回の取り組みは、当社としても初めての試みでした。
金融教育と一言で言っても、何を教えるべきなのか。
そしてどのような順番で伝えるべきなのか。
社内でも議論を重ねました。
最終的には、お客様のご意向も伺いながら、
3年間の伴走型プログラムを設計することになりました。
当初は、資産運用の知識を体系的に学んでもらうことを想定していましたが、
実際に始めてみると、もっと手前に重要なことがあると感じました。

資産運用の話になると、「金額と運用商品」に目が向きがちです。
最初に必要なことは、自分自身と家族の資産全体を把握することだと考えました。
現金、株式、保険、不動産…
お話を進める中で、奥様もお嬢様も、
ご家族全体の資産を意外と把握できていないことにも気付きました。
当然と言えば当然です。
大きな話から始めると、贈与された資産をどのように運用するかよりも、
大切なことに気付いていきます。
そこで奥様、お嬢様、そしてご家族全体のバランスシート(B/S)を
考えてもらうところから入りました。
バランスシートから考えると、最大の資産は金融資産ではなく人的資本だと気付きます。
今持っている1,000万円ではなく、
これから何十年も働いて生み出す人的資本が重要になります。

どのような会社で働くのか。
どのような経験を積むのか。
どのようなスキルを身につけるのか。
将来の資産形成を考える上で、そうした視点も欠かせないことを伝えていきます。

プログラムの中では、個別株や企業分析にも触れています。
興味のある企業を調べてもらい、IR資料を一緒に見ながら、
・この会社は何を強みにしているのか
・なぜ利益が出ているのか
・10年後はどうなっているのか
を考えていきます。
投資というより、企業を見る練習です。
株価が上がるかどうかを当てることではありません。
社会や企業の仕組みに興味を持ち、
自分なりの視点で考えること。
そのきっかけになればと考えています。

金融教育というと、株式や金融商品の選び方。NISAなどの制度活用。
そういった内容を想像する方もいるかもしれません。
しかし実際には、興味のない状態で知識を伝えることは難しいものです。
そこで今回まず考えたのは、「金融や資産運用に興味を持ってもらうこと」でした。
その意味では、興味のある会社から、
株式投資を考えていくことは良い経験になったようです。

弊社のお客様の中には、資産規模が数億円、数十億円に及ぶ方もいらっしゃいます。
そのようなご家庭になると、相続対策や資産運用だけではなく、
「次世代がその資産とどう向き合うか」が大きなテーマになります。
金融詐欺。
悪質な投資話。
営業色の強い金融機関。
資産があるからこそ狙われるリスクもあります。
婚姻関係によるリスクといった課題もあります。
親がある程度資産があると分かれば
子どもの働く意欲・自立意欲が低下する可能性もあります。
資産家である親側から見たら、そんな心配もあるでしょう。
お金との向き合い方や資産管理の考え方。
専門家との付き合い方。
そういったことは勿論、親側・子ども側双方の視点に立って、
伝えていく必要があると感じています。
マネーリテラシーという言葉が少しずつ浸透している昨今ですが、
資産を承継することと、その資産を守り育てられることは、決して同じではありません。

AIの発展によって、分かったつもりになれる時代になりました。
簡単な企業分析もできます。
投資信託の比較もできます。
正解らしい答えは簡単に手に入るように思えます。
今回の金融教育事業を通して感じたアドバイザーとしての価値は、
答えを教えることではなく、問いを投げかけること。一緒に考えること。
そして、本人が自分の言葉で判断できるようになること。
ここにあるのではないかと思います。
ただ資産運用を適切にできるように教えていくだけではなく、
次世代を担うお子様が資産をきちんと承継すること。
そして、資産も含めたご自身の人生と向き合う力を承継すること。
そんな気付きを得てもらえたらと考えています。
今回の取り組みはその第一歩ですし、私にとっても新しいチャレンジです。
マネーライフプランニングとしても、
世代を超えてご家族をサポートできる体制を少しずつ整えていきたいと考えています。
資産を承継すること。
そして、資産と向き合う力を承継すること。
これからのファミリーオフィスには、その両方が求められているのだと思います。