レポート

セミナー報告

2021年3月開催「幸せの5つの要素」セミナー ~財産編~ 活動報告

UPDATE 2021.07.01

2021年3月24日水曜日19時~21時
NATULUCK銀座 room B(東京都中央区銀座2-7-18 銀座貿易ビル)にて開催いたしました
「幸せの5つの要素」セミナー ~財産編~の活動報告です。

 

幸せになる資産運用、そのポイントとは

今回のセミナーでは、投資家のみなさんからよくいただく質問を5点に整理し、株で失敗しないためにはどのような行動を取ればいいのか説明しました。大原則は、「株を長く持つこと」「マーケットのことは予測できない」というスタンスで運用することです。

「どうしたら初心者でも失敗しないで運用できますか」―失敗しない秘訣は「長期」「分散」
基本的なポイントは、「長期運用」「投資対象の分散」です。

長期的に見れば、株価は必ず上昇します。例えばバブルのピーク時に投資した場合、5年くらいではピーク時の相場以上には回復していないケースや、むしろマイナスとなるケースがあります。一方で、20年間運用し続けていると、どのようなタイミングで始めても20年後の株価は大抵上がっています。

そして、長い運用期間中に社会がどう変化しても、投資対象を分散させていればある程度の資産を築き、守ることができます。円の預金や日本国債券はデフレで円高のときに、外国の債券はデフレで円安のときに強く、インフレ時は基本的には株や不動産が対応できます。分散比率は四等分にするのが分かりやすいでしょう。あとは、投資家自身がどの部分に対してよりリスクを感じるのかというメンタル要素も考慮に入れてください。

「なぜ株式を購入するのですか」―株価は絶対に上昇する
繰り返しますが、理屈上、株価とは上昇するものです。

バランスシートを思い浮かべてください。右側に純資産が表示されていますが、純資産とは株主の権利であり、つまり株主の取り分ということです。企業が1年間会社をきちんと経営していれば、損益計算書に示される利益分だけ純資産は増加します。こうして株主の権利も増加します。

これが株価の上がる仕組みです。専門用語では、前年度の純資産に対する翌年度の純資産の増加分をROEという指標で表します。前年度の純資産に対しROEが10%だったら、純資産が10%増えたということで、短絡的に言えば株価が10%上がってもおかしくないことを意味します。長年にわたって利益を積み上げている会社の株が上がっていくのは、こういう理由があるからです。

「なぜ、アクティブファンドよりインデックスファンドの方がいいのですか」―長期運用にはインデックスファンド
結論から言えば、世に出回っているアクティブファンドは、そのほとんどがインデックスファンドより良い成績をあげていません。S&P ダウ・ジョーンズ・インデックスのレポートでは、次のような結果が報告されています。

日本の運用会社が日本株のファンドを1年間運用したケースでは、インデックスファンドの成績を上回ったアクティブファンドは18%、残りの約8割はインデックスファンドに負けています。10年運用のケースや、海外株に投資するファンド、アメリカの運用会社によって運用されているアメリカ国内ファンドなどを見ても、総じてアクティブファンドはインデックスファンドに勝てていません。

これと関連して質問されるのが、「評価されているファンドなら勝ち続けられるのではないか」ということです。しかし、過去の実績と将来の成績はなんの関係もありません。バンガード社による次のような報告もあります。ファンド評価サイト『モーニングスター』に五ツ星と評価されたファンドと一ツ星と評価されたファンドそれぞれを36ヶ月運用したところ、インデックスファンドに勝てた五ツ星ファンドは39%でしたが、逆に一ツ星では46%のアクティブファンドがインデックスファンドより良い成績をあげました。過去の数年間の実績は最悪に近くても、その後の数年間は優れた成果を残したのです。

「売買のタイミングはいつがいいのですか」―”Stay Market”の原則
そもそも、基本的には「市場に居続ける」ことが大事です。実は、売買のタイミングを計ることにあまり意味はありません。

アメリカの代表的な株価指数であるS&P500は、1980年代から2020年代の数十年で大きく値上がりしています。しかし、短期的に見れば上昇相場と下落相場を繰り返しています。2000年から2019年まで市場に居続ければ、年率で約6.1%増えていることになりますが、この期間に売買を繰り返し、最高のパフォーマンスを見せた10日間を逃してしまった場合、年率は2.4%に下がります。さらに25日間を逃したとすると、マイナス1%損をすることになります。逆に、最悪の25日だけを除けば年率は18%に達することもあり得ますが、あらかじめ予測して最悪の日はマーケットから出ていくということはできません。たとえ今の相場が上昇傾向でも、バブルが弾けるのか、上昇相場がまだ続くのかは分からないのです。

「なぜアドバイザーは必要なのでしょうか」―誤った行動から投資家を守る存在
バンガード社のあるレポートでは、アドバイザーを付けた投資家と付けていない投資家のパフォーマンスを比較したところ、年間3%ぐらいの差が出たことを明らかにしています。もっとも大きな要因は、投資家の誤った行動を事前に回避させるコーチングで、ここで1.5%の差がついています。アセットロケーションと、税制もふまえた運用アドバイスがそれぞれ0から0.75ポイント、その他、お金の引き出し方へのアドバイス、リバランスへのアドバイスが、投資家のパフォーマンス上昇に大きく貢献していることが示されています。アドバイザーに対する手数料はかかりますが、それを差し引いても、アドバイザーを付けることには高い付加価値があることが分かります。

最後に、セミナーで寄せられた質問をご紹介しましょう。

Q. 現行のNISAが2023年で終了し、2024年から新制度がスタートしますが、つみたてNISAなどに振り替えた方がいいのですか?
A. ここでも投資の大原則と同じことが言えます。つまり、先のことは分かりません。つみたてNISAは「長期」「分散」の枠組みでの運用を基本とした、一般NISAよりも失敗しにくくなるように設計された制度ですが、年間の投資可能枠は一般NISAの120万に対し40万円と少額です。現時点でNISAを運用されている方も、「長期」「分散」のスタンスで運用していけばよいのです。

Q. 税金の考え方は?
A. 今の日本の税制では、キャピタルゲインに対して20%が課税されます。含み損益は課税の対象にはなりませんから、利益確定のタイミングも取り崩しの方法も、投資家としては気を遣うところです。キャッシュ化の必要があるときは、なるべく儲かってないものをキャッシュ化したほうがいいでしょう。もし損失を出してしまった場合は、確定申告の際に損益通算、つまり損とプラスを相殺することができます。また、法人名義で資産運用をする場合は、売却益が出たときに法人の経費で落とせるケースもありますから、運用額が大きくなってきたら法人スキームを使っていくことを提案します。

Q. 株資産を売却するタイミングはいつがいいのでしょうか?
使いたいときに売ればいいのです。そして、使い道がなければぜひ使い道を考えてください。バフェットやゲイツは財団を作って、世界中の子どもを救う活動を支援しています。使い方を考えておかなければ、そもそも売るタイミングもありません。

 

 

地域を自立させるための投資―事業家・投資家 糀屋総一朗

地方の魅力が消えてしまう
福岡県沖に浮かぶ世界遺産の島、大島。僕のエリア・リノベーション・ファンドはここから始まりました。4年前、新たな投資先を探していた僕に知人が紹介してくれた島です。と言っても、最初は誘いに乗って軽い気持ちで足を運んだだけだったのですが、僕は一目で島に魅了されました。自然が豊かで、海の幸に恵まれ、古事記にもその名を見る歴史ある島なのです。

しかし、島のことを知れば知るほど、僕は危機感を抱きました。現在、島では人口減少や産業の停滞が進み、地域社会の維持が難しくなっています。今は約590人が暮らしていますが、5年後には2、3割に減るという推計もあるのです。このままでは、島の魅力もろとも地域が失われてしまいます。起業家・投資家として、島のために何かしたい―模索する中でたどり着いた答えが、エリア・リノベーション・ファンドだったのです。

コンセプトは「地域とともに」「地域のなかで」
エリア・リノベーション・ファンドは、お金を地域に循環させる仕組みを通して、地域の人々と一緒に、地域の自立と永続を目指すファンドです。その土台となるのが、「地域資本循環経済圏」。地域が生み出した利益が、地域内で循環している経済圏のことです。僕の活動を一言で言えば、「地域資本循環経済圏」を地域の人ともにつくる、ということになります。

なぜ「地域資本循環経済圏」が重要なのでしょうか。衰退している地域というのは、外部からのモノやサービスに頼って生活しており、地域にせっかく落とされた多くのお金が外部に流出しています。また、住民が地域の資源の価値に気づいておらず、それを活用して地域経済を回すこともできていません。ですから、お金の流出をストップさせるとともに、域内で循環させることが、地域の自立と再発展につながるのです。

ここで僕はあることに気づきました。流出する金額の割合が最も大きいのは、域内の産業に投資した資本家や株主に対するリターンなのです。ということは、地域の経済を回す地元民が株主となれば、お金を域内で回すことができます。出資者となった地域住人にはオーナーマインドが醸成され、「自分たちの地域」という自立心も強まるはずです。

4つの手法
では、大島で僕が実践している手法を、順にご紹介しましょう。

1. 資産・事業を地元資本に譲渡することを約束
現在、金融機関、投資家、そして自身の会社であるCFACで民法上の匿名組合を組成し、島内の産業に出資をしています。土地や建物が安いので最初の購入金額も少額で、非常に大きなリターンが見込めるファンドです。投資・運用しているだけではありません。大島の魅力を引き出すための滞在施設や体験型の観光サービスなどの実現に向けて、島の人たちとともに活動しています。このファンドが既存のファンドと大きく違うところは、これらの事業や不動産などすべてを将来的には地域に譲渡することを、地元民に約束している点です。僕の強い思いを具現化している部分です。

2. TECH4分野への投資
TECHとは、
Tourism観光
Energyエネルギー
Currency地域通貨
Healthcareヘルスケア
の4領域のことです。僕は、これらの領域に集中的に投資しています。

とりわけ注目しているのはヘルスケア領域です。特に、温泉旅行や医療ツーリズムなどのヘルスツーリズム領域は、2025年までに約3兆円の市場に成長すると言われています。僕の戦略は、市場規模の大きいところに資金を振り分け、島の資源をうまく使いながらビジネスを作っていくこと。現在の大島の観光・宿泊産業はSWOT分析でいうWeaknessにあたりますが、弱みが強みに変われば、ブルーオーシャン戦略が展開できる領域でもあるのです。

3. 高付加価値サービスへの投資+都市圏or海外との交易
人口減少社会でGDPを上げるには、高付加価値の製品やサービスを提供し、生産性をあげていかなければなりません。ところが、大島では本来なら一万円以上の値がつけられる海鮮料理を5、000円ほどで提供しています。これでは、地域が疲弊してしまいます。

”MINAWA”は、島や地元民の現状を変えるねらいをもって仕掛けた宿泊施設です。お客さんは一日一組限定、宿泊費は一泊10万円以上。当初、島の人たちは懐疑的でしたが、実際にオープンすると週末が予約で埋まるようになります。さらに、滞在者が島でMINAWAの話をしてくれたので、この宿泊施設が成立していることが島の人たちにも理解されていきました。

イノシシのジビエを使った高級ペットフード事業も始めました。イノシシは、大島では農業や生活に深刻な被害をもたらす害獣です。これまでは捕獲者たちが個人的に食用にする他は余剰となっていましたが、これを島の新たな名産品に活用することにしたのです。現在はOEM生産ですが、将来的には島内に工場を設置し、地元の方を雇用することを考えています。また、イノシシ肉だけではなく、豊富な魚介資源、特に市場に出せない傷物を優先的に活用した商品開発や、オンラインショップでの販売も視野に入れています。これらの活動を域外のお金の獲得へつなげることを見据えているのです。

4. 地域にまちづくり会社をつくり、地域の人たちとともに域内の産業をつくりあげる
「魚を与えるのではなく釣り方を教えよ」という格言があります。エリア・リノベーション・ファンドにおいても、域内の住民と一緒に域内の産業をつくり、最終的にその事業を域内の人たちで保有することが重要です。

この思想を実践するために、渡海屋(とかいや)という会社を立ち上げました。メンバーは、島出身者1人を含めた4人。”島づくり”の看板を掲げて様々な事業を展開しています。宿泊施設運営や新しい物産の開発に加え、ファスティングプログラムなど、高付加価値で高所得者層向けの観光プログラムを次々と展開する一方で、地域に根ざしたコインランドリー事業、レンタカー事業、レンタサイクル事業や、電気工事、水道工事、ごみ清掃なども請け負っています。

地域を変えて、日本を変える
大島での事例は、あくまでエリア・リノベーション・ファンドの最初の一歩。将来的に同様の投資を全国でも展開することが、僕のミッションです。現在、日本の地方自治体は、1,700から1,800ほどあると言われます。それら自治体に2億、3億と投資すれば、およそ5,000億~6,000億円の市場が生まれることになるのです。ミッションの実現のためには、僕の理論を理解してくれて、現場での実践力も備えた、地域のキーパーソンとして動ける人物が必要だと思っています。まだ見ぬ同志に期待しています。

OSHIMA STAY&ACTIVITIES MINAWA
https://minawa.jp/