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GW前後から新興市場で話題になっていた株式会社オルツ
決算資料上の、売上計上が過大なのではないかとの疑念で
4月25日には第3者委員会が立ち上がったようです
そこで、決算資料の読み込みなどについて
どの程度ChatGPTが利用できるのかという事も含めて調べてみることにしました。
最初に、直近のオルツ社の有価証券報告書をChatGPTに読み込ませます
その上で「特にこの5年間の決算数字を見たときに、
粉飾決算が疑われそうな印象があるかどうか教えてください」
と聞くと
株式会社オルツの直近5年間(第7期〜第11期)の決算情報を確認したうえで、
粉飾決算の「疑いがあるかどうか」という観点で判断するには、
以下の視点から整理するのが適切です。
###■ 財務データの推移(提出会社ベース)
年度 | 売上高(千円) | 経常損失(千円) | 当期純損失(千円) | 純資産(千円) | 資本金(千円) |
---|---|---|---|---|---|
第7期(2020) | 55,526 | ▲201,746 | ▲187,828 | 199,666 | 490,326 |
第8期(2021) | 955,969 | ▲384,528 | ▲385,478 | 274,420 | 720,442 |
第9期(2022) | 2,666,074 | ▲670,352 | ▲671,302 | 3,118,295 | 100,000 |
第10期(2023) | 4,111,995 | ▲1,497,762 | ▲1,498,712 | 2,303,714 | 100,000 |
第11期(2024) | 6,057,288 | ▲2,357,082 | ▲2,637,744 | 4,062,650 | 2,298,340 |
###■ 粉飾の兆候として注目すべき観点とオルツの状況
チェックポイント | コメント(オルツの場合) |
---|---|
**急激な売上高の増加** | 5年で約100倍と急増。ただし事業内容(生成AI・SaaS)とマーケット動向を踏まえると成長自体は妥当な範囲。営業CFがマイナスである点も自然。 |
**損失の継続** | 一貫して赤字であるため、利益の捏造は見られない(典型的な粉飾は利益の過大計上)。 |
**資本金の増減・資金調達** | 資本金が2023年から2024年にかけて急増(100,000千円→2,298,340千円)。これはIPOに伴う増資と一致しており、不自然ではない。 |
**キャッシュフロー** | 営業CFが大きくマイナス、財務CFがプラス(資金調達)。典型的な成長投資段階のスタートアップの形。 |
**監査体制** | 第9期以降は監査法人シドーの監査を受けており、形式面の信頼性も一定確保。 |
**売上と現金の整合性** | 売上は伸びているが、営業キャッシュフローは一貫してマイナス。これは「売上=キャッシュ化ではない」SaaSビジネスモデルでは通常。 |
###■ 総合的な見解
**粉飾決算が疑われるような明確な兆候は、決算データ上は見当たりません。**
・急成長の数字はインパクトがあるものの、業界特性(生成AI、LLM等)や社会的トレンド、上場準備・達成といった外部環境に沿った形で進んでいます。
・一貫して赤字であり、むしろ損失を隠していない点は粉飾の可能性を下げます。
・IPOを経ている企業であり、監査法人の関与・EDINET報告といった透明性の高いプロセスを踏んでいる点も信頼度を高めています。
###■ 注意点・留意点
・**売上の質(継続課金かスポットか)**などの詳細が不明なため、売上の信頼性については補足開示や注記、契約内容が必要です。
・**連結子会社やPoC売上の計上時期**などによっては会計基準との整合性もチェックすべきですが、これは粉飾というより「収益認識の裁量範囲」の問題です。
と回答され、きちんと5年分の数字(有価証券報告書から読んだ)を基にわかる範囲で整理してくれています。
さらに「売上について過大に計上されている可能性を指摘されているようですが、それについてはどう思いますか?」
と売り上げの過大計上について振ってみると
非常に重要な視点です。オルツに関して「売上の過大計上が疑われている」という指摘があるとのことなので、有価証券報告書の記載を基に検証してみます。
##■ 売上の過大計上リスクの検討ポイント
以下は、売上の信頼性(特に過大計上の可能性)を判断するうえで注目すべき観点です。
検証ポイント | オルツの状況(※報告書ベース) | 評価 |
---|---|---|
① 継続課金 or スポット収益か | 「AI GIJIROKU」など一部は**SaaS型(サブスクリプション)**だが、PoC契約が多い(例:altBrainなど) | △(PoC収益は一過性になりやすく、安定性に乏しい) |
② 売上計上基準の明確性 | 収益認識の詳細は記載なし。PoCは「AX Research&Solutions事業」で収益計上とあるが、**成果物の納品時点?契約締結時?**などの明記はない | △(判断基準の曖昧さ) |
③ 売上増加とキャッシュの整合性 | 営業キャッシュフローは**一貫してマイナス**(第11期:▲24億円)。つまり、売上があっても**実際のキャッシュ回収は少ない** | △(過大計上の典型リスクパターンの一つ) |
④ 売掛金の増減 | ここでは報告書本文から確認できていないが、**売掛金が急増していれば注意**が必要 | 要確認 |
⑤ 監査法人の意見・限定付きか否か | 監査法人シドーによる監査済であり、**限定意見などの記載は見当たらない** | ○(形式的には問題なし) |
⑥ 上場直前の売上急拡大 | 売上は2020年の0.5億円 → 2024年で60億円。**IPO直前(2023→2024年)で+約2億円**と急成長 | △(成長率がやや急な印象はある) |
## ■ 総合評価(売上の過大計上疑惑について)
オルツの売上には以下のような**注意が必要な点が複数見られます**:
- **SaaSだけでなくPoC中心のスポット収益が多い**ため、「一度きりで継続しない売上」が含まれる可能性が高い。
- **営業キャッシュフローとの乖離が大きい**点は、「未回収売上」が多い可能性や「請求ベース先行の計上」などを想起させます。
- 一部プロダクト(例:altBrain)はまだPoCフェーズにとどまっており、「実用化が先の技術」を収益として先取りしている疑いもゼロではありません。
ただし、「意図的な不正」=粉飾決算とまで言える決定的な証拠(監査意見不適正、売上の二重計上など)は**報告書からは確認できません**。むしろ、こうした指摘に備えて**PoC収益の記載を分けている**ようにも見えます。
## ■ 結論
> **売上計上の過大リスクは否定できないが、「粉飾決算」と断言できる状況ではない**というのが適切な評価です。
特に以下を注視する必要があります:
- 売上の契約形態と実際の履行タイミング
- 売掛金の増加傾向と回収率
- 監査法人が特に何を確認したか(監査報告書や注記でわかる)
という感じに、資料を見るべきポイントまで教えてくれます。
財務諸表を読みなれている人であれば、
こうした指摘内容の意味合いがよくわかりますし、ポイントも次ぐにつかめて便利です。
読みなれていない人にとっては、自分の読んでいる財務諸表を読むポイントを
教えてくれる先生にはなるのではないかと感じました。
これから、経営幹部や経営者に対して2つほど財務に関するセミナーを依頼されているので、
このChatGPTを利用しながらのワークなどできないか考えてみます。