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また、その他資産運用に関する様々なコンテンツをお届けします。【対談】「ポートフォリオ戦略で考える、長期投資の大切さ」後編
長期目線で考えれば、未曾有の事態にも慌てずに対応できる。
小屋:私たちのお客さまは富裕層の個人が多いので、自分や家族の人生を考えた10年、20年単位の長期的な視野を持ってくれていますが、コロナのパンデミックのような事態が起こると、短期的な値動きにどうしても引っ張られてしまう人が増えると感じます。
山本:人生全体ぐらいの長期スパンで投資を考えるのはとても重要ですね。私が投資家の方々によく言うのは、「ご自身が亡くなられた後、孫やひ孫の代まで考えて、運用しましょう」ということです。例えば毎年5%の配当がある企業なら、100年経てば500%の配当益が得られるわけですよね。それだけ利益が得られれば、買ったときの値段なんてどうでもいい話になります。いまは1%の配当しかなくても、その企業のやっていることが正しければ、10年後には5%、6%になっていることも十分ありえます。だいたい上場企業の倒産確率って、3000社のうち年間に1〜2社ぐらいなので、ほとんどの会社は潰れません。つまりたいていの上場企業の株は、数十年の単位で長期的に保有していれば、ほぼ確実に得するんです。「自分の余命」じゃなくて、子孫3代ぐらいのスパンで考えることが、投資の成功確率を上げるためには大切だと思います。
小屋:まさに同感です。いま60代、70代の方はとくに、自分の余命のなかで資産の最大化を考えるか、2世代、3世代後での最大化を考えるかで、投資行動が大きく変わりますよね。投資を通じて、優れた技術やサービスを持つ会社を応援することで、自分たちの次世代のために社会全体を豊かにする、という視点を持ってほしいと思います。
山本:投資に精を出す富裕層の人たちもね、余裕があるからって自分のことだけ考えてたらダメなんです。日本の将来のことを、しっかりと考える責任があるんです。そもそも今の自分になんで余裕があるかといえば、過去に、自分に対していろんな形で投資してくれた先人がいたからじゃないですか。そのおかげで富裕層になれたんだから、今度はノブレス・オブリージュの精神を発揮して、将来のために真剣に戦っている若い人たちに「武器」としてのお金を配ることが、ある種の義務なんです。そういうサポートをせずにただの「消費者」であることに満足し、高い飯やいい酒を毎日飲み食いして喜んでる人は、人間というより「豚」ですよ。一方、投資家の側だけでなく、運用を勧める金融業界側も、質を高めていくことが必要だと感じてます。こう言っては問題かもしれませんが、日本の金融機関や運用会社の多くは、「ぼったくり」ですよね。みんな一等地に立派なオフィスを構えてますけど、それはお客さんから搾取したお金が原資になっている。
小屋:……同感です(笑)。
山本:いまの運用業界は「売る側」の論理で動いていますから、投資家がどんどん回転売買してくれたほうがいいんです。売買の度に手数料が入るから。金融商品を作っては「特別に選ばれたあなただけにお売りします」とか適当なことを言って、富裕層に売りつけるのが常態化している。それで気づいたら資産が半分になったりしても、誰も責任をとりません。
小屋:そういう話は、本当にお客さんからよく聞きますね。
山本:そういう奴らは本当に撲滅しないといけない(笑)。私も小屋さんも、金融業界が仕掛けた「地雷」をお客さんが踏まないように、取り除いてあげることを仕事にしていますが、投資家の人たちが安心して歩ける環境を作ることが大切だと感じます。投資を始める人はだいたい、60代になって仕事を引退したあとで、数百万〜数千万の現金をどうしようか、と考えるところからスタートします。そうすると、大手の金融機関に何となく安心感を覚えて、メガバンクの金融商品などを買ってしまいがちですが、その結果、大企業が仕掛けた「地雷」を踏んでしまうんです。一方で小さな独立系の運用会社も、めちゃくちゃな投資をやっているところが珍しくないので、本当に注意が必要だと思います。それと私の会社の課題でもありますが、独立系運用会社は経営者や担当者の「属人性」に運用が任される割合が大きいという問題があります。マネーライフプランニングなら、こういうと縁起でもないですが(笑)、小屋さんがお亡くなりになっても大丈夫なのかという心配に、きちんと「ご安心ください。なぜなら……」と回答を示しておく必要があると思うんです。大手ではない私たちのような小さな運用会社でも、2世代、3世代スパンで、お客様の50〜100年単位の資産形成をお手伝いできることを、体制づくりからしっかり進めていくことが大切ですね。
小屋:大手が安心というのは、「みんなと一緒の行動をしていれば、リスクを回避できる」という日本人にありがちな思考が背景にあるのかもしれませんね。
山本:そうだと思います。でも株式投資って、一言で言ってしまうと「多数派についたら負け」で「正しい少数派が勝つ」ゲームなんですよ。多数の人の意見を聞いて、自分の意見を決めているようでは絶対に勝てません。僕はよく「ランチで行列に並んでいる人は株式投資に勝てない」と言うんですが、「12時になると店が混むから、先に予約をしておこう」「まだほとんど誰も知らない、できたばかりのあの店に行こう」といった具合に考えることが、投資でも大切です。
小屋:そういう意味で、勝てる投資をするためには「情報」をどこから得るかも重要になってきますよね。
山本:はい、新聞に書いてある情報をもとに投資をしたら、まず負けますね。新聞の情報って、記者が誰かに取材した「2次情報」なんですよ。しかもそれを、世の中の何百万人という人が同時に見ているわけですから、何の優位性も得られません。大切なのは「1次情報」をもとに、自分の頭で考える、分析するということだと思います。じゃあ1次情報がどこにあるのかといえば、企業のホームページを見れば、ちゃんと載っているわけです。企業がきちんと公表している商品の情報やIR資料を見ずに、誰が書いたかもわからないネットの2次、3次情報を鵜呑みにしてしまう人が、投資家の人にも少なくない。
小屋:そうですね。みんなと同じ情報には、価値がない。
山本:投資において大切なのは「情報の速さ」じゃなくて、「信頼できる良い情報」と「そこから自分で導き出す答え」であることは、ぜひ多くの人に伝えていきたいと思いますね。
小屋:今日は、山本さんのお話に共感することが沢山ありました。ぜひ今後も、山本さんと協力しながら「正しい投資の姿」を世の中に広げていければ嬉しいです。ありがとうございました!