資産運用の考え方
03_資産運用の優先順位
私たちがお客様の資産運用のご相談に乗る場合には、必ずお客様の「貸借対照表」(バランスシート)を作成します。
一つの例を挙げてみましょう。これは、会社員の方のバランスシートの一例です。
この例では、不動産(自宅)が資産の3分の2を占めています。
この場合には、保有している不動産(自宅)の価値をどのように維持していくかが、一番重要であり、預金部分の運用ももちろん大事ですが重要度は下がります。
これに「人的資本」の考え方を入れてみましょう。
「人的資本」とは様々な解釈のある言葉ですが、資産運用の視点では、その人が労働によって将来にわたって生み出すことのできる収入の期待値のことです。
この例の会社員の方が、現在40歳、年収700万円、定年退職まで20年とした場合の人的資本は約700万円×20年=14,000万円です。
(実際は、退職金を考慮したり、価値も将来のキャッシュフローを割引した現在価値で考えるのが妥当ですがここでは単純化しています)
この場合、「貸借対照表」(バランスシート)は下記のように変化します。
こうすると、一番大きな資産は「人的資本」であり、次点が不動産、預金は3番手になります。
この場合考えなければいけない優先順位は、
です。
話を資産運用に戻しますが、どうしても「資産運用」=「金融資産運用」という発想になりがちですが、上で見たように本当は「人的資本」と「不動産」の管理が「金融資産運用」
以上に重要なのです。
では、この場合「預金」になっている金融資産はどのように運用するのが良いのでしょうか?
一番重要なのは、「人的資本」が棄損した場合に、価値が上昇する金融商品です。
「人的資本」が棄損するのは、大きく分けて
などあると思いますが、それぞれ
に投資することがリスクを減らすことに繋がります。
実際の運用で、ここまで考えるのか?という疑問もあるかと思いますが、少なくとも上記の考え方では
ということが言えます。
次に、この会社員の方が定年を迎えた時点のことを考えてみます。
定年を迎え、退職金を受け取り、住宅ローンを完済したイメージです。
これをみると、初めて預金(金融資産)が不動産資産を上回る状況になりました。
また、先程あった人的資本がきれいに無くなっています。
日本人の多くは、リタイアして初めて切実に「資産運用」と向き合う事が多いのだと思います。
「人的資本」が無くなった時点で、資産は「金融資産」と「不動産資産」になるからです。
残念ながら人口減少社会に突入した日本では、「不動産資産」の上昇は期待しにくい状況ですので、この「金融資産」をどのように運用して、利用して(取り崩して)いくのかという課題に直面します。
「金融資産」の運用は、経験が大事ですので、20代~30代の『人的資本 > 金融資産』の状態のうちから、60代の『人的資本 < 金融資産』になるまでの間に、沢山の経験を積むことが重要です。
つまり、20代~50代の現役層は「人的資本」が大きいので、
逆に60代以上の方は
ことが必要です。
すでに資産運用をご自身でも行っている人にも思い出していただきたいのは「何のために運用をしているのだろうか?」という点です。
基本に立ち返れば、我々は自分たちの「マネーライフプラン」を実現するために資産運用に取り組んでいるのです。
ですから、運用を行うには、自分の「マネーライフプラン」とその運用が連動しているのかということも重要なポイントです。
私たちは「とにかく資産が増えればいい」という運用には意味がないと考えています。
具体的に言えば、人生には大きく4つの資金が必要と言われています。
①「生活資金」・・・日々生活に必要なお金、緊急時(失業や病気)の備えとしても利用する
②「教育資金」・・・子供の教育に備えるお金、入学費用、授業料や塾代など
③「住宅取得資金」・・・住宅取得時に頭金や諸経費に充てる資金
④「老後生活資金」・・・老後の生活として、年金では不足する生活費などを補てんするもの
これらの資金は、その必要とするまでの期間と目的があります。
特に株式や債券の運用は、短期間では運用のぶれが生じますので、資金を利用するまでの時間が重要です。
「マネーライフプラン」を作成して、それぞれの資金の時期と目的がはっきりしたのであれば、その計画に合わせてポートフォリオを組むことが必要です。