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資産の選び方

09_保険の正しい選び方①

生命保険の正しい選び方

生命保険は何のために加入するのでしょうか?

そもそも保険とは「リスクヘッジ」の商品です。多数の人間が事故に備えて皆でお金を出し合い、危険に遭遇した場合に金銭的に損害を補填する仕組みです。
私がコンサルティングをしている中でも、必要以上に保険に加入している事例を多く見かけます。
必要以上にコストをかけてヘッジすると、今度は普段の生活費や将来の貯蓄が少なくなってしまい、逆に将来の生活にリスクが出てきてしまいます。

したがって、保険の仕組みや必要な保障額を理解することはとても大切な作業になります。

まず、生命保険の種類について確認します。
生命保険のカバーするリスクには大きく3つの種類があります。


1.死亡に関するリスク(ライフリスク)
2.短期就業不能に関するリスク(短期ディスアビリティリスク)
3.長期就業不能に関するリスク(長期ディスアビリティリスク)

この3つを順に説明していきます。

1.死亡リスクに対する考え方

死亡に関するリスクは、家庭の中で主要な収入を得ている人が亡くなった時に発生するリスクです。
死亡に備える保険の必要額は以下の式で計算します。

①将来家族に必要なお金 - ②将来(現在)準備できているお金

①将来家族に必要なお金の主な項目

  • 遺族の生活費
  • 子供の学費
  • 住宅費
  • 葬儀費用

になりますので、それを一つずつ検証します。

例えば、

  • 遺族の生活費は毎月いくら必要なのか?
  • 子供にはどのような進学希望があるのか?
  • 持ち家か?賃貸か?実家に戻るのか?
  • 葬儀費用にどの程度お金をかけるのか?

②の将来(現在)準備できているお金についても

  • 今後配偶者が働くことで稼ぐ金額
  • 遺族年金などの公的保障
  • 勤めている企業の福利厚生制度(死亡退職金、遺族年金など)
  • 現在の貯蓄残高
  • 両親など親族の援助

を一つずつ検証します。

特に、

  • 遺族の生活費
  • 配偶者の収入
  • 住宅の有無(住宅ローンの団体信用生命保険も含む)

の3点は、保険金額を決める際の非常に大きな要素になりますので
充分に考える必要があります。

具体的な例で考えてみましょう。

【事例1】
夫 40歳 妻39歳 長女 5歳 長男2歳
夫年収 600万円 妻年収400万円
自宅 賃貸 18万円/月
生活費 20万円/月

先程の手順に基づいて具体的に計算してみましょう。

①将来家族に必要なお金

遺族の生活費
遺族の生活費は、残された妻・子供の生活費です。

毎月の生活費は、現在20万円ですが、夫にかかる費用が5万円ほど含まれていますので、死亡後の必要生活費は15万円/月になります。
また、子供2人が大学を卒業すれば、生活費は10万円程度になるでしょう。
女性の平均寿命は88歳ですが、ここでは90歳までと仮定します。
したがって、
15万円×12カ月×20年(長男卒業まで)+10万円×12カ月×31年(90歳まで)=7,320万円
となります。

住宅費
住宅費ですが、もし夫に万が一の事があれば、妻の実家に帰る予定です。
全くの無料というわけにもいかないでしょうが、実家には5万円程の家賃を渡す予定です。
したがって、
5万円×12カ月×51年=3,060万円
となります。

子供の教育費
子供の教育費は、私立高校や大学への進学も考えられるので1人当たり1,800万円程度みています。
1,800万円×2名=3,600万円
葬儀費用、万一時の費用
葬儀費用や、死亡時の諸費用として300万円をみています。

これで、夫の死亡時に将来必要なお金は
7,320+3,060+3,600+300=14,280万円
と算出されます。

②将来に準備できる(している)お金

今後妻が働いて稼ぐ金額
現在の年収は400万円です。手取りでは300万円程度になっています。
夫が死亡時には60歳まで働くつもりですので
300万円×21年=6,300万円
となります。この場合には、退職金は考えませんでした。

遺族年金など公的年金
遺族年金は、当面は子供2名への基礎年金+配偶者への遺族厚生年金がもらえます。
具体的な計算は省きますが、このケースでは
65歳までに遺族年金分の3,300万円、65歳からは老齢年金+遺族年金をあわせた3,000万円
合計6,300万円がもらえる計算でした。

将来に準備できる(している)お金

夫の会社から支給される死亡退職金
夫の会社では、死亡時は現時点での退職金に多少の割増があるようで、800万円の死亡退職金がもらえます。
現在の貯蓄
貯蓄は現在300万円の預金があります。

よって、将来に準備できる(している)お金は
6,300+6,300+800+300=13,700万円

さて、この家庭の場合、夫の必要な死亡保障はいくらでしょうか?

必要な保障額=①将来に必要なお金-②将来に準備できる(している)お金
ですから
14,280万円-13,700万円=580万円と計算できます。

如何ですか?想像よりも多かったでしょうか?少なかったでしょうか?

実際のコンサルティングでは、その家庭の状況や考え方に沿ったシミュレーションを行いますが、先程の例でも、生活費や住宅費をどのような前提で考えるかによっては、簡単に数千万円の違いが生じます。
例えば、生活費が月1万円違うと612万円も増えます。住宅を賃貸のままだと考えるとその額は5,000~6,000万円も変化します。

ただ、上記の手順で計算を行なえば、一般的な世帯では、以下のようになるはずです。

  • 社会人で独身→死亡保障は必要ない
  • 結婚したばかりの夫婦→死亡保障は必要ない
  • 結婚後、子供が誕生→ある程度の死亡保障が必要
  • ローンで住宅購入→団体信用生命保険に加入し、一般の死亡保障は大幅に減る
  • 子供が大学を卒業→子供の教育費分の保障が減らせる
  • 退職してリタイア生活→退職金と今後の生活費のバランスを再計算