運用する

はじめに

資産運用をはじめる、その前に。

資産運用に初めて取り組まれる方には、その考え方が間違っているために、あまり上手く行かない、あるいは損をしてしまうケースも良く見かけます。

ご自身で資産運用をするにしても、プロに相談するにしても、
まずは多少の資産運用についての知識は身につけておかれたほうがよいと思います。

一方で、資産運用の話題になった際に、ほとんどの場合
「あそこの株がいい」「あそこの債券がいい」といったような
個別の銘柄の話や、手法の話に終始してしまうことが多いことに
違和感も覚えています。

それはそれで大切な面もあるのですが、そのようなスタンスで
大切な資産をきちんと守り、育て続けることは、難しいと言わざるを得ません。

もし私たちが、これから資産運用を始めようとしている方に
「なにから始めたらよいですか?」
と聞かれたとしたら、まずお伝えするのは、
資産運用を始めるための検討の手順についてです。

資産運用は、ギャンブルとは違い、きちんとした手法が確立された
科学的なものです。
もちろん運に左右される部分もありますが、それ以上に、
まずは「基本に忠実に」運用することが最も重要であると考えています。

ある意味では、全く資産運用の経験のない方でも、
きちんと基本原則を守って運用すれば、ある程度の運用実績を上げることは
十分可能だと言えます。

プロに相談するにしても、ご自身で運用されるにしても
どちらにしても重要なお話ですので、この機会にお伝えさせていただこうと思います。

1. ライフプランを検討する

資産運用に取り組むのは、あくまで個々人のライフプランを実現するためです。
つまり、将来どのような収入があり、将来どのような支出がある中で自分のやりたいこと
を整理していく必要があるのです。

この部分を省略して、お金の数字だけに焦点を当てると、そもそもの資産運用の目的が
わからなくなり、投機的な銘柄に手を出したり、失敗しやすくなります。

2. ライフプランを実現するのに必要な利回りなどを検討する

私たちがこれまでお手伝いしてきたお客様は、ライフプランから検討すると、
所有している金融資産を2~4%程度の利回りで運用できれば、
ライフプランで希望するシナリオの実現可能なケースがほとんどでした。

資産運用というと、5%や10%以上の利回りを求めてしまいがちですが、
必要以上にリスクを取ってしまうと、失敗する確率が高くなります。
ご自身のライフプランを実現するために必要な利回りを知ることは
資産運用を始めるうえで、非常に大切です。

3. 手元の流動性を確保する

資産運用に取り組む前に、半年~2年分程度の家庭支出に相当する現預金は
緊急用の資金として確保しておいてください。

この半年~2年分は、自営業やサラリーマン・公務員などの収入の安定性によって変化させて考えましょう。
つまり、収入の安定性の高い方は半年分ほどのキャッシュがあればよいでしょうし、
安定性の低い方は2年分ほどのキャッシュを確保しておく方が望ましいと言えます。

手元の流動性が厚くなれば、医療保険やがん保険などの短期傷病リスクに備える
必要はなくなりますので、こうした契約も整理して、キャッシュフローを改善することができます。

4. 使う制度を検討する

資産運用には、税制的に優遇された制度も複数あります。
例えば、小規模共済や確定拠出年金など年金に関わる制度が多いのが特徴です。

通常の銀行や証券会社で取引を始める前に、税制優遇制度の枠内で上手く運用できないかを検討します。

NISAなどももちろん検討材料に上がります。

5. アセットアロケーションを検討する

4.の手順まで終わったら、初めて投資する資産対象を検討します。
アセットクラス(国内株式、国内債券、海外株式、海外債券など)によって、
過去のリスクやリターンはデータ上整理されていますので
自分の取れるリスクの範囲で、2.で検討をしたリターンを実現できるような
アセットアロケーション(どのアセットにどれくらい投資するのか)を検討します。

6. 個別の商品を検討する

5.で大きなアセットアロケーション割合を決定したら、初めて個別の金融商品を検討します。

1.~5.のステップを全て飛ばして、いきなり個別商品の話をするのは、
個人投資家でも金融機関の窓口でも当たり前に行われていますが、全くお勧めできません。

個別商品の選択では、よっぽど自分の商品選択に自信がない限りは、
ローコストな商品がそのまま素直にリターンの改善につながると考えてよいでしょう。

現在、資産運用に取り組んでいる方々は、1.~6.のステップをきちんと踏まえて検討されたかどうかもう一度考えてみると良いと思います。