【対談】相手の人生に寄り添い、信頼関係を築く。独立系アドバイザーという仕事 – 前編 【対談】相手の人生に寄り添い、信頼関係を築く。独立系アドバイザーという仕事 – 前編

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【対談】相手の人生に寄り添い、信頼関係を築く。独立系アドバイザーという仕事 – 前編


UPDATE 2024.12.14

【対談】相手の人生に寄り添い、信頼関係を築く。
アルファ・ファイナンシャル・アドバイザーズ合同会社 代表社員CEOアン・マリー・レイリーさんと語る、独立系アドバイザーという仕事 - 前編

今回の対談ゲストは、アン・マリー・レイリーさん。
アメリカで、2002年から個人投資家に向けて資産のポートフォリオ管理および財務計画サービスを提供してきたAlpha Financial Advisors, LLC (アルファ・ファイナンシャル・アドバイザーズ)のエグゼクティブディレクター、CEOを務めています。
独立系登録投資顧問会社(RIA)である同社は、今年、東京にオフィスを開設し日本に進出しました。アンさんとは旧知の小屋が、海外駐在員の顧客と日本の個人投資家にサービスを提供する独立したアドバイザリー・プラットフォームの構築を進めていくという同社の狙いや、日米での投資環境やアドバイザービジネスの違いなどについて語り合いました。

 

対談者プロフィール

  • Ann Marie Reilley

    Ann Marie Reilley(アン・マリー・レイリー)

    アルファ・ファイナンシャル・アドバイザーズ合同会社(公式サイト
    代表社員 CEO
    CFP®公認ファイナンシャルプランナー
    米国公認会計士

    ヴィラノバ大学で会計学と日本語の学位を取得後、ニューヨークのデロイト・アンド・トウシュでキャリアをスタート。その後、東京を拠点とするベアー・スターンズのアジア地域コントローラーを務めた。このときの経験からアジアでのビジネス展開の支援に関心を抱くようになった。アメリカ帰国後はタックス・プランニングとパーソナル・ファイナンスに興味を持ち、CFP®の資格を取得。2010年にアルファに入社。現在はアルファ・チームの指導に情熱を注ぎ、メンバーの育成を楽しんでいる。

  • 小屋 洋一 (聞き手)

    小屋 洋一(聞き手)

    株式会社マネーライフプランニング(公式サイト) 代表取締役

    1977年宮崎県生まれ、東京育ち。2001年慶應義塾大学経済学部を卒業し、総合リース会社に入社。中小企業融資を担当した後、
    2004年不動産流通業を行うベンチャー企業に転職。営業、営業企画等を経験し、2008年に退職。
    同年にAFPを取得後、独立し、個人富裕層のアドバイスに特化した株式会社マネーライフプランニングを設立。
    2010年にCFP®を取得し、現在に至る。

    <所属・関連団体>

    <SNS>

 

日本とアメリカをつなぐ架け橋として

小屋僕がアンさんと初めてお会いしたのはもう10年近く前のことですよね?

アン・マリー・ライリーさん(以下、アン)そうですね。小屋さんをはじめ、数人の日本のファイナンシャルプランナー(以下、FP)がアメリカのNAPFA(全米パーソナル・ファイナンシャル・アドバイザー協会)が主催するカンファレンスにアドバイザリー・ビジネスの実情を学びたいと視察に来てくれました。
私はそのとき、すでにアルファ・ファイナンシャル・アドバイザーズで仕事をしていて、独立系のアドバイザーとして少しお話をしたと思います。

小屋その後も僕は仲間たちと毎年アメリカ視察を続けていて、そのたびに見学可能なFP事務所を紹介していただいたり、お世話になっています。なによりアンさんは日本語ができるので心強かったです。

アン少しですけどね。そもそも私が日本と関わることになったきっかけは、大学生の時の留学体験でした。当時、富山県にホームステイをして、日本文化に触れ、深く感動したのを覚えています。帰国後も日本語を学び、将来は日本とアメリカの架け橋になれるような仕事ができたら……と考えていたので、小屋さんたちとのつながりは私にとっても楽しい出来事でした。

アンさんの話している様子

小屋僕たちと知り合う前、アンさんは東京でも仕事をされていたんですよね?

アン大学卒業後、デロイト・トウシュ・トーマツ(Deloitte Touche Tohmatsu)に入社して、会計士としてニューヨークオフィスの日本部門で働き始めました。
その後、デロイトの東京オフィスに異動しました。金融機関の監査を経験したのちに東京を拠点とするベアスターンズに転職して、徐々にパーソナル・ファイナンスに関心を持つようになっていきました。アメリカに帰国してからCFP® 資格を取得して 2011 年にアルファ・ファイナンシャル・アドバイザーズに入社し、個人の方々の資産形成に貢献する仕事を始めました。

小屋今回、なぜアンさんは、日本でビジネスを進める判断をされたんですか?

アンアルファ・ファイナンシャル・アドバイザーズで経験を重ねる中で、日本の個人投資家の方々にも、独立系アドバイザーによるファイナンシャルプランニングの機会を提供したいと考えるようになったからです。
実は、この思いは小屋さんたち日本で活動するFPの皆さんとの出会いが大きなきっかけとなっています。私たちは毎年、日本のFPの方々をアメリカの会議やオフィスに招いて、フィー・オンリー(報酬型)(※)のビジネスモデルについて学んでいただく機会を設けてきました。その過程で、日本にも同様のニーズがあること、そして、私たちが進出することでそのニーズを満たすことができる可能性があると確信していったのです。

※フィー・オンリー(報酬型)
金融商品の販売手数料ではなく、アドバイスの対価としての報酬のみを受け取るビジネスモデル。アドバイスの中立性や透明性を確保しやすい特徴がある。

 

アドバイザーはクライアントのクォーターバックのような存在

小屋アメリカでの報酬型のアドバイス業務の状況について聞かせください。

小屋さんの話している様子

アン当然ながらアメリカにもフィー・オンリーではなくコミッションをもらうアドバイザーや、金融商品を販売するために助言を行うセールスマンもいます。そして、一般的なアメリカ人は大手銀行や証券会社を窓口にすることに慣れていて、独立した報酬型のアドバイザーと彼らとの違いを理解していません。その点は日本の現状と変わらない部分もあると思います。
ただ、アメリカには20年以上前からフィー・オンリーのアドバイザーが活躍してきた歴史があり、多くのクライアントが専門家のアドバイスを受けることの意義と価値を理解し、報酬を支払っているのです。事実、2011年には 3,800 万ドルだった私たちの管理資産は 2024 年 8 月現在、4 億 9,800 万ドルに増加しています。

小屋クライアントとアドバイザーの関係はどのようなものですか?

アン私たちの役割は、いわばアメリカンフットボールでいうクォーターバックのような存在です。私たちのアドバイスは投資に関することだけにとどまりません。例えばクライアントの多くは、モーゲージブローカー、相続専門の弁護士、税理士、銀行家、保険代理店など、複数の専門家と関わりを持っています。私たちは時に、そうした専門家とクライアントの間の調整役として、クライアントの価値観や目標に沿って、すべての要素を適切に整理していく役割も担うのです。
また、突発的な出来事への対応も重要な仕事の1つです。あるクライアントが相続に関する重要な署名を残さないまま危篤状態になったことがありました。私はすぐに病院に駆けつけて彼の意志を確認し、書類を適切に処理しました。その場に居合わせた彼の兄は私たちの関係性の深さを目の当たりにして、その後、ご自身もクライアントになってくれたのです。彼は「アドバイザーとして私を本当に気にかけ、必要な時に支え、最善を尽くしてくれる関係を築けると感じた」と言ってくれました。
これは私にとって忘れられない経験でした。このように単なる投資アドバイザーとクライアントというを枠組みを超えて、相手の人生に寄り添う関係を築けることが、この仕事の醍醐味だと思います。

 

現在の日本は、約30年前のアメリカの状況によく似ている

アンアドバイザーはクライアントの人生の目標に沿って、統合的なアドバイスを提供する必要があります。そこで、クライアントに「もし病気の診断を受け、残りの人生があと3年だとわかったら、あなたは何を変えますか?」といった質問を投げかけることもあります。そうすることで、その人が本当に大切にしているものが見えてくるからです。

アンさんの話している様子

小屋たしかに、私たちのような独立系アドバイザーの強みは、アドバイスの価値にありますね。実際にうまくいったアドバイスの事例を教えていただけますか?

アン2020年のコロナショックが印象に残っています。アメリカに限らず、世界中の多くの人が市場の下落を受けてパニックになる中、私たちはこれを逆に買い増しの機会ととらえ、税務戦略も組み合わせてクライアントの皆さんにアドバイスをしました。市場が再び上がる時期はわかりませんが、必ず上がることはわかっていたからです。
「なぜ買うのですか? こんなひどい状況なのに」と誰もが感情的になる局面においてこそ、冷静な視点でサポートするのが私たちの重要な役割です。
アメリカでは、このようなアドバイザリーモデルが広く受け入れられていますが、日本ではまだこれからという段階です。私は日本市場に大きな可能性を感じています。
現在の日本は30年前のアメリカの状況に似ているところがあり、これから独立系アドバイザーの価値が広く認識されていく過渡期だと見ています。

小屋その通りですね。日本でも少しずつ、私たちのような独立系アドバイザーの存在価値が認知され始めていますし、まだまだ発展の余地は大きいと感じています。

後編へつづく

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