【対談】相手の人生に寄り添い、信頼関係を築く。独立系アドバイザーという仕事 – 後編 【対談】相手の人生に寄り添い、信頼関係を築く。独立系アドバイザーという仕事 – 後編

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【対談】相手の人生に寄り添い、信頼関係を築く。独立系アドバイザーという仕事 – 後編


UPDATE 2024.12.21

【対談】相手の人生に寄り添い、信頼関係を築く。アルファ・ファイナンシャル・アドバイザーズ合同会社 代表社員CEOアン・マリー・レイリーさんと語る、独立系アドバイザーという仕事 - 後編

 

資産運用の未来を拓くフィデューシャリー・モデルへの挑戦

小屋アンさんをはじめとした、アルファ・ファイナンシャル・アドバイザーズが大事にしていることを教えてください。

アン・マリー・ライリーさん(以下、アン)私たちの成長を支えてきたのは、クライアントとの信頼関係の構築を大切にするという価値観です。私たちは新規のクライアントとの関係構築において、必ず、包括的な財務計画の策定から始めます。クライアントと一緒に目指すゴールは、単に豊かなリタイアメントではありません。
転職、起業、旅行、結婚、子どもの教育、親の介護など、お金が関わるあらゆる目標について、まるで白紙のキャンバスに描くように夢を語っていただき、私たちはそれに耳を傾けます。
クライアントの人生には本当に多くのピースがあります。私たちは彼らの考えと目標、描いている夢を深く理解し、それらのピースを整理する手助けをしていくのです。

小屋お金のことだけではなく、クライアントのライフプランニングのお手伝いをするという意識は僕も大切にしています。

アンそれは本当に大事なことです。同時に私たちは資産についても定期的なミーティングを行い、5つの重要な分野をカバーしていきます。それは、キャッシュフローと貯蓄、保険による資産の保護、投資とポートフォリオの管理、税務戦略、そして相続計画です。
クライアントとの関係が始まった初期の段階では特に頻繁にミーティングの場を設け、それぞれの分野について深く掘り下げていきます。

アンさんの話している様子

小屋そうしたアメリカでの経験は、日本でも活かせるとお考えですか?

アンもちろんです。実は、日本市場への参入を決意したのも、私たちのビジネスモデルが日本の個人投資家の方々に大きな価値を提供できると確信したからです。
アメリカでの経験から、独立系アドバイザーの市場シェアが増加すると、結果として個人投資家の選択肢が広がり、より良質なサービスを受けられるようになることがわかっています。
特に日本では、従来の金融商品仲介業とは異なる、フィデューシャリーとしてのアプローチが重要だと考えています。商品販売ではなくクライアントの利益を第一に考えた継続的なアドバイスを提供していくこと。この考え方は、金融庁が推進するフィデューシャリー・デューティー(※)の方針とも合致しています。
とはいえ、これは一朝一夕に実現できることだとは考えていません。アメリカでも、独立系アドバイザーの価値が広く認知されるまでには30年近くかかりました。その分、非常にやりがいのある挑戦だと感じています。

※フィデューシャリー・デューティー(受託者責任)
顧客の利益を最優先に考え、忠実に行動する義務のこと。金融商品の販売手数料ではなく、アドバイス報酬を主な収入源とすることで、利益相反を防ぎ、より中立的な立場でアドバイスを提供することが可能になる。

 

日本人の投資環境の課題と可能性

小屋日本の投資環境については、どのような印象をお持ちですか?

アン日本の金融市場の最大の課題は、多くの方が現金保有に偏重していることです。先進国の中で、日本ほど現金比率が高い国はありません。
これが1980年代のバブル崩壊の影響なのか、あるいは日本人の保守的な傾向によるものなのか、正確な理由はわかりませんが、今後変えていく必要があると感じています。
特に現在はインフレが上昇傾向にあり、現金保有は実質的にマイナスのリターンを生んでいます。それでもこの状況を変えるためには、慎重なアプローチが必要です。いきなりリスクの高い投資を勧めるのではなく、まずは保守的な投資から始めることが重要だと考えています。

小屋確かに、資産のほとんどを預貯金で持っている日本人の多くが、今も投資に対して不安を感じています。

小屋さんの話している様子

アンそうですね。だからこそ、アドバイザーの役割が重要になってきます。例えば、新NISA(※)のような制度は、投資を始めるきっかけとして非常に良い機会だと思います。「投資して利益が出れば、そのすべてがあなたのものになる」というのは、とてもわかりやすいメッセージですよね。
また、最近ではETFなど、低コストで分散投資ができる良質な商品も増えています。日本の個人投資家の方々が、企業や政府に依存するのではなく、「自分の将来は自分で守る」という意識を持つことが重要だと思います。

※新NISA(2024年〜)
2024年にスタートした少額投資非課税制度の新制度。個人一人につき年間最大360万円、生涯1,800万円までが配当や売却益が非課税になる。投資初心者でも利用しやすい制度設計となっている。

小屋実務面での課題はありますか?

アンはい。米国では様々なテクノロジーツールを活用して効率的なサービス提供を行っています。例えば、複数の金融機関の口座情報を一元管理したり、ポートフォリオの自動リバランスを行ったりするツールがあります。
夫婦で6、7つの口座を持っているケースもめずらしくなく、401k(※)やIRA、教育資金口座、医療費積立口座など、様々な口座を包括的に管理する必要があるからです。このような複雑な資産管理を効率的に行うためには、テクノロジーの活用が不可欠です。

※401(k)プラン
米国の確定拠出型年金制度。日本のiDeCoに相当する。雇用主が提供する退職給付制度の一つで、加入者が自己責任で運用を行う。

小屋日本でも、そういったプラットフォームの整備が課題ですね。

アンその通りです。現在、日本の多くのアドバイザーは、効率的なツールがないために、本来やらなくてもよい作業に多くの時間を費やしていると聞いています。米国には『MoneyGuidePro』のような優れたソフトウェアがありますが、まだ日本向けには対応していません。裏を返せば、この分野は今後の大きな事業機会になる可能性があると思います。

アンさんの話している様子

小屋アルファ・ファイナンシャル・アドバイザーズの日本での今後の展望についてお聞かせください。

アン私の夢は、10年後に振り返ったときに、『日本は本当に変わったね』と言えるような変化を生み出すことです。時間はかかるかもしれませんが、日本の多くの方々が、独立系アドバイザーを通じて適切な資産運用の恩恵を受けられるようになることを願っています。
そのためには2つの大きな課題を解決する必要があります。1つは参入コストの問題です。現在の日本の金融界に海外の事業者が参入しようとした場合、登録費用や法的対応のコストが高く、小規模な事業者にとって大きな負担となっています。もう1つは、取引に関する規制の見直しです。アメリカでは、資格を持ったアドバイザーが直接、資産運用の取引を執行できますが、日本ではまだその体制が整っていません。

小屋制度面での改善は確かに重要ですね。

アン規制の問題もありますが、より本質的なのはアドバイスの価値を理解してもらうことです。日本では、アドバイスに対して適切な報酬を支払うという考え方がまだ浸透していませんが、長期的に見れば、アドバイザーによる適切なアドバイスによって節約できる金額や、得られるリターンは支払う報酬を上回ることが多いのです。
そして、私たちの仕事の最大の魅力は、クライアントの人生をより良くできることです。
投資リターンを上げることは重要ですが、それ以上に、その人の人生の重要な場面に寄り添い、より良い選択をサポートできることが、このアドバイザー業務の醍醐味だと思います。道のりは簡単ではありませんが、日本にもこの新しいビジネスモデルを根付かせていきたいですね。

 

対談者プロフィール

  • Ann Marie Reilley

    Ann Marie Reilley(アン・マリー・レイリー)

    アルファ・ファイナンシャル・アドバイザーズ合同会社(公式サイト
    代表社員 CEO
    CFP®公認ファイナンシャルプランナー
    米国公認会計士

    ヴィラノバ大学で会計学と日本語の学位を取得後、ニューヨークのデロイト・アンド・トウシュでキャリアをスタート。その後、東京を拠点とするベアー・スターンズのアジア地域コントローラーを務めた。このときの経験からアジアでのビジネス展開の支援に関心を抱くようになった。アメリカ帰国後はタックス・プランニングとパーソナル・ファイナンスに興味を持ち、CFP®の資格を取得。2010年にアルファに入社。現在はアルファ・チームの指導に情熱を注ぎ、メンバーの育成を楽しんでいる。

  • 小屋 洋一 (聞き手)

    小屋 洋一(聞き手)

    株式会社マネーライフプランニング(公式サイト) 代表取締役

    1977年宮崎県生まれ、東京育ち。2001年慶應義塾大学経済学部を卒業し、総合リース会社に入社。中小企業融資を担当した後、
    2004年不動産流通業を行うベンチャー企業に転職。営業、営業企画等を経験し、2008年に退職。
    同年にAFPを取得後、独立し、個人富裕層のアドバイスに特化した株式会社マネーライフプランニングを設立。
    2010年にCFP®を取得し、現在に至る。

    <所属・関連団体>

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