ご相談事例
相談事例_12ライフプラン
今回ご紹介させていただくのは、定年退職を迎えた60代女性からのご相談事例です。
ご相談者さまは、長年お勤めされた飲食店を2022年10月に定年退職し、退職金1,000万円を受け取っています。元の職場からは「退職後も嘱託社員として働いてもらうことができる」と告げられています。嘱託社員になった場合、年収は144万円(月収12万円程度)です。
ご本人は、定年退職をしたら司法書士の勉強をしたいという夢があり、実際、退職前から司法書士試験のためのスクールに通って勉強をされていました。資格取得後は事務所で働くか、場合によっては独立も考えていらっしゃいます。一方で、元の職場では戦力として非常に信頼されていたようで、引き続き自分なりに力になりたいとも考えていらっしゃいました。
相談者さまが心配されているのは以下の2点です。
・退職後の働き方について、現在の金融資産も踏まえて自分がやりたいこと(司法書士)とどうバランスをとっていくのがいいのか
・定年後の金融資産に問題はないか、また、退職金1,000万円はどう活用するのがいいのか
ご相談者さまは、3,700万円ほどの預金資産(退職金1,000万円含む)をはじめとする金融資産が約7,000万円あり、都内のマンションおよび北海道のアパート2棟合わせて約7,000万円の不動産を保有されています。北海道のアパートに関しては、購入時のローンが500万円ほど残っています。
お子さまはお2人で、長女さまは独立して生計をたてられており、現在同居中の二女さまも企業に勤務し、将来的には家を出られる可能性が高いとのことです。つまり、扶養に関する問題はありません。
現在のバランスシートやキャッシュフロー表から今後の貯蓄残高推移を算出したものが下記のグラフです。ご覧いただいて分かるように、将来の金融資産は十分な量で推移しそうなことがわかりました。まずその点ではご安心いただけます。
これを踏まえ、当初のご相談ごとに即して、課題感とご提案にあたってのポイントを以下の3点に整理しました。
自分の今後(退職後)の働き方
結論から言えば、ご相談者さまは資産上の大きな問題もありませんし、経済的な心配はせず自由に働いていただけると思います。
元の職場で働き続けたいというご希望もくんで、こちらからは、「週2日程度は現在の職場で時短勤務をしながら、週3日は司法書士という仕事のリサーチもかねて司法書士事務所でアルバイトをしてはどうか」とご提案しました。最終的にご相談者さまは、週3日を飲食店で働きながら、スクールで司法書士試験の勉強をされています。
退職金も含め、手元のお金をどうしたらいいか
金融資産は十分に保有されているため、その一部である不動産の2,000万円分が3,000万円になろうと、逆にゼロになろうと、大きな影響はありません。つまり、運用についての課題はないと言えます。
ただ、現在のポートフォリオが国内資産で構成されており、将来の円安リスクには対応が不十分でしたので、海外資産にも分散させることをお勧めしました。具体的には、インフレ・円安シナリオに対する備えとして、外国株式や外国債券を保有されることを提案しました。
資産をどのように承継していくか
現在のキャッシュフローや想定されている働き方を基に算出してみると、ご相談者さまの資産は順調に増えていき、将来は2億円近くの資産を保有できることになります。
そうなると課題は、運用というよりは、将来どのようにして子どもたちに承継していくか、ということになります。例えば、北海道にある2棟のアパートをお子さまたちに資産継承するとなると、それはお子さまたちにとって結構な負荷ともなり得るでしょう。
昨今は、親世代が80代90代で亡くなり、相続する子世代は60代というケースが多いです。ですが、60代というのは、数千万円を相続したとしても今後それだけの金額をもう必要としない年代なのです。余生を考えるタイミングでもらう4,000万円より、結婚や子育てのタイミングでもらう1,000万円のほうが助かるともいえます。
したがって、親世代は、もっと早いタイミングで子世代に承継してくことを考えてもよいでしょう。ただ、現時点ではまだご相談者さまの目が向けられていない要素なので、まずは上記1、2に絞って行動を起こしていただくのがいいかと思います。
ご相談者さまの今のご関心は、次の2点でした。
①自分の今後(退職後)の働き方
②退職金の1,000万円をどう運用すればよいか
このお悩みに対して、それぞれ以下のようにご提案をしました。
①資産には現在も将来も大きな問題はないので、ご希望される働き方を選んでいただいて問題ない。
②ポートフォリオは国内資産の占める割合が大きいので、外国株式や外国債券など、海外資産を保有する。
そのほか、今後の課題となり得ることとして、将来高齢になっていく中で遠方の収益不動産をどのように管理していくのかということがあります。
また、北海道に美容室を営むお母さまがいらっしゃるとのことで、お母さまの資産を相続することを想定して、今後どうしていくかも課題になりそうです。